リモコンのシャッターを使って客が自ら撮影を楽しむ「セルフ写真館」が、若者の人気を集めている。韓国からブームに火が付き、日本でも出店が相次ぐ。プロ仕様の機材や設備で本格的な写真が撮れる上、新型コロナウイルス禍が長引く中、自分たちだけの空間で撮影できることも利用者の安心につながっている。（小森有喜）

　兵庫県三田市出身のカメラマン松本唯さん（３０）は４月、大阪市西区に専用スタジオ「ＮＯＶＥ　ＳＴＵＤＩＯ（ノーヴェスタジオ）」を開いた。以降、休日は１０、２０代の女性やカップルらの予約でいっぱいだ。

　６月上旬、大阪府高槻市の高校３年孝橋杏瞳（あずみ）さん（１７）と酒井菜摘さん（１７）が訪れた。２人は、学校の先輩が写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿した写真を見て、同スタジオを知った。

　受け付けを済ませ、スタジオへ。約４０平方メートルの室内に一眼レフカメラや背景紙、照明、モニター画面があり、２人は目を輝かせた。

　カメラマンはいない。時間は１０分で、撮影枚数に制限はない。互いに見つめ合ったり、手を広げたり、ぬいぐるみを持ったり。リモコンを手に５秒に１回ほどシャッターを押す。撮った写真はそのままモニター画面に映し出され、出来栄えを確かめながら撮影できる。

　韓国の人気男性７人グループ「ＢＴＳ（防弾少年団）」の曲をスピーカーで流し、いろいろな表情を試して大はしゃぎの２人。「ちゃんとしたスタジオと同じだからいい写真が撮れる」「プリクラと違って好きなタイミングでシャッターを押せた」。仕上がった写真を早速、動画投稿アプリ「ＴｉｋＴｏｋ（ティックトック）」とインスタグラムに投稿した。

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　セルフ写真館は韓国で人気を集め、今年２月ごろから東京や京都、神戸などで出店が相次いでいる。

　動画制作などを手掛ける松本さんは当初、自分が撮影するスタジオを開くつもりでこの場所を借りた。しかし、コロナ禍による外出自粛などで記念撮影の需要は減少。客同士だけで利用でき、安全性もＰＲできるセルフ写真館としてスタジオの活用を決めた。

　若い女性やカップルの客が多いが、家族写真や成人式の前撮りで利用するケースもある。あえてモノクロの写真にするのが主流。「おしゃれだから」という理由だという。

　もちろんプロが撮影するような表情とは違うが、「普段の自然な笑顔が撮れる点で好評を得ている」と松本さん。反響の大きさに驚いているという。コロナ禍で旅行やイベントなどの制限が続いていることもあって、「撮影そのものがいい思い出になった」と話す利用者も多いそうだ。

　撮影時間と料金は１０分３千円、２０分５千円。基本は撮影データ３枚を選ぶが、追加料金（千円）を払えば全データを購入できる。午前１１時～午後９時。同スタジオＴＥＬ０６・６６４３・９０７９

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■今は「第４次韓流ブーム」　ファッションやグルメ、ランク上位

　１９９０年代後半～２０００年代初頭生まれの「Ｚ世代」と呼ばれる若者を中心に、ファッションやグルメなどの韓国カルチャーが広く受け入れられている。

　若者の流行を分析するシンクタンク「Ｚ総研」（東京都）による２０年下半期流行ランキングトップ１０のグルメ部門では、「トゥンカロン」という大きいマカロンや、ミルクの上に泡立てたコーヒーをのせた「ダルゴナコーヒー」などの韓国発が半数。コスメの部門でも韓国ブランドが半分を占めた。

　同社によると、現在は「第４次韓流ブーム」。セルフ写真館は今年２月ごろから、動画投稿アプリのＴｉｋＴｏｋ（ティックトック）などを通じて日本で認知度が急上昇した。人気ガールズグループ・ＮｉｚｉＵ（ニジュー）がリモートシャッターで撮ったＣＤのジャケット写真を公開するなどし話題を呼んだ。

　担当者は「Ｚ世代にとって韓国文化は、日本の若い女性から始まった『カワイイ文化』を海外から見るのと同じように、あこがれの対象」と分析。その上で「幼い頃に少女時代やＫＡＲＡといった韓国アイドルの活躍をテレビで見ていた世代でもあるため、より親近感があるのではないか」とみる。（小森有喜）