京都の劇団・ニットキャップシアターが14~17日、「チェーホフも鳥の名前」を兵庫県伊丹市のアイホールで上演する。日本が戦前領有していたロシア極東サハリン(樺太)を舞台に、国籍や民族を異にする3組の家族の、1世紀にわたる物語が紡がれる。(田中真治)
チェーホフのルポ「サハリン島」と戯曲「三人姉妹」を下敷きに、「入り組んだ歴史に翻弄(ほんろう)される個人を描きたかった」と劇団代表で作・演出のごまのはえ。2019年に初演し、岸田国士戯曲賞の最終候補になるなど高い評価を得た。
物語の起点は、この辺境の流刑地をチェーホフが訪れた1890年。場所は後に日本名で「野田」、現在は「チェーホフ」と呼ばれる町だ。
豊富な資源を求めて入植が進み、日露両国民や朝鮮人、先住民族のニブヒ(ギリヤーク)らが交わりながら、それぞれ家族を形作っていく。日露戦争後は南北に国境線が引かれるが、劇では「厳しい自然の中で隣人として生きる、民族や国家を超えた友情や愛情を一番の柱にした」という。
だが、第2次大戦が彼らを引き裂く。命を奪われた者と生き残った者。引き揚げた者と残留を余儀なくされた者。朝鮮人一家は朝鮮戦争で故郷に帰れず、在日として生きてきた。戦後三十数年、墓参団への参加により、ばらばらになった子孫たちは出会い、複雑な思いが交錯する-。
題名は「多くの人が来ては去る、その様子が渡り鳥みたいに思えた」ことから。サハリンで「銀河鉄道の夜」を着想したといわれる宮沢賢治も、その1人として物語に膨らみを与える。
コロナ禍を経験しての再演に、「生活する人同士の助け合う姿を強調したい」と話す。
14日午後6時半▽15日午後1、6時▽16、17日午後2時開演。前売り一般3800円、ペア7千円など。アイホールTEL072・782・2000
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