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牛舎内に霧状の水をまいて暑さを和らげる。乳牛に暑さは大敵=豊岡市日高町猪爪、上田牧場
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牛舎内に霧状の水をまいて暑さを和らげる。乳牛に暑さは大敵=豊岡市日高町猪爪、上田牧場
大型扇風機で乳牛の暑さをしのぐ=豊岡市日高町猪爪、上田牧場
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大型扇風機で乳牛の暑さをしのぐ=豊岡市日高町猪爪、上田牧場

 酷暑の夏となり、酪農家の多くが存続の危機に立たされている。北欧原産の乳牛は、暑さに弱い。体調、乳量の管理には空調が欠かせないが、電気料金高騰がコストとして重くのしかかる。加えて飼料価格も、世界的需要拡大やロシアのウクライナ侵攻などで急激に上昇している。苦境の兵庫県内の生産者からは「このままでは事業を続けられない」と悲鳴が上がる。(森 信弘)

 最高気温が連日35度を超える同県豊岡市。搾乳牛35頭を育てる同市日高町の上田牧場では、長い舌を出して呼吸を速くする牛が目立つ。牧場を営む上田潔さん(50)は「蒸し暑いと体から熱を逃がせなくなりバテる。食欲が落ち、乳量も減っている」とこぼす。

 牛舎ではここ数年、大型扇風機を増設し、現在は17台が稼働する。霧状の水をまく装置も使っており、電気料金の上昇もあって電気代はかさむ一方だ。例年、夏場は冬の4倍ほどかかるが、今年はさらに上回るとみている。

 そこに飼料代の高騰が追い打ちをかける。今年5月の牧草代は100万円を超え、1年前に比べて40万円ほど増えた。トウモロコシなどの配合飼料も値上げが続き、7月分の支払いは牧草と合わせると前月比でも10万円余り膨らみそうだという。

 上田さんは「扇風機の使用やえさを減らさざるを得ない。病気になっては元も子もないが…」。配合飼料の購入には国や県の支援があるが、増額分には到底届かず、牧草に至っては何もない。「値上げ幅が大きすぎる。もう限界」と頭を抱える。

     ◇  ◇

 農林水産省によると、県内の酪農家は今年2月時点で232戸。このうち大規模酪農家らでつくる「ハイクオリティミルク農業協同組合」(神戸市中央区)は約50戸の生乳を集めて、乳業メーカーに卸している。毎月、各戸の売り上げから共同購入する飼料代や手数料を差し引いて組合員に手渡す。が、えさ代の高騰で逆に支払いを求められる事例が増えているという。

 代表理事組合長の丸尾建城(たてき)さん(69)が約120頭を飼育する丸尾牧場(赤穂市)でも、6月の売り上げ約1400万円のうち、手元には100万円も残らなかった。ここからさらに電気代がかかる。従業員4人を雇用しており、「先行きが見えない」と不安を募らせる。

 乳業会社に卸す生乳の価格は、地区ごとに生産者側との交渉で決まり、各地の酪農家は値上げを求めている。近畿地区では2019年以来据え置かれていたが、大手メーカーとの間で、飲用とヨーグルト向けを今年11月から1キロ当たり10円引き上げることで合意した。関東や北海道でも同様の値上げに踏み切る。

 丸尾さんは消費者に理解を求めながら「コストの増加分にはまだ足りない。値上げ分が手元に入る12月までもたない牧場が出るのでは」と懸念する。

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