元兵庫県三木市職員の浦崎良太さん(51)=三木市吉川町=が、写真作家としての第一歩となる個展をギャラリー301(神戸市中央区栄町通1)で開いている。元々は、写真が趣味だった親友を交通事故で亡くし、心の穴を埋めるため、供養のように始めた趣味。技術を磨く中で心を動かす喜びを知り、多くの人の目に留めてもらおうと思い立った。
親友の「づっきー」とは地元の高校で出会った。鉄道写真と、青春18きっぷで全国を旅するのが好きな青年だった。浦崎さんはいずれも興味はなかったが、気が合う友人との旅行は楽しかった。社会人になっても関係は変わらず、当てもなく、夜が更けるまで車を走らせるのが週末の恒例になった。真っ暗な鳥取砂丘に着いて「撮れ高」のなさに爆笑するような、何げない日々がいとしかった。
1994年4月1日、づっきーが死んだ。いつものドライブ中、対向車線をはみ出した乗用車と衝突し、運転席にいた親友だけがいなくなった。助手席で生き残った浦崎さんは、ぽっかりと心に穴があいた。骨折で入院中に目に飛び込んだのが、フィルムカメラの広告だった。心の穴を埋めるように、退院直後から独学で撮影を始めた。
被写体に選んだのは、人里離れた場所にある渓流や、冬の日本海だった。波が起こり、岩に当たってしぶきを上げ、やがて静まる。まるで「波の一生だ」と感じ、夢中でシャッターを切った。幼い頃、高波にのまれて生死をさまよった経験がよみがえり、死と隣り合わせのような感覚にもなった。づっきーを身近に感じられたような気もした。
現実逃避のように写真を撮る生活を10年以上続けた頃、発表の機会を求めて、三木市役所で個展を開くことになった。訪れた人々は、じっと写真を見つめ、「感動した」と告げて帰っていった。
腕を見込んで、知り合いから家族写真の撮影を頼まれることも増えた。40代でがんになった知り合いの女性から「遺影を撮って」と言われ、一番の笑顔を収めて写真集にしたこともあった。作品を渡すと、みんな感動して泣いていた。人の心を動かす喜びを知り、今まで「撮って終わり」だった空っぽな心が、満たされた。
50代にさしかかり、写真は人生の全てになった。社会人目前の子ども2人に、作家の夢に向かう父の姿も見せたくなり、知人の導きで一念発起。環境も変えようと、長年勤めた市役所も辞めた。活動の第一歩として開いた個展に出品した10点は、原点の波の写真でそろえた。
人の心を動かしたいという思いが原動力になっているのは、30年前には想像できなかった自分だ。づっきーとの死別はつらくて、でも忘れたくなくて、毎晩思い出すようにしているが、出会いと別れがあったからこそ今の浦崎良太がある。だから、言葉を天国に届けられるとすれば、これだけで十分だ。
「づっきー、ありがとうな」
27日まで。正午~午後6時(27日は午後5時まで、22日は休み)。ギャラリー301TEL078・393・2808
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