
フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終戦、NHK杯最終日は28日、大阪府門真市の東和薬品ラクタブドームで行われ、女子は坂本花織(シスメックス、神院大)がGP初優勝。三原舞依(シスメックス、甲南大)は4位に入った。
2年前に全日本女王を射止めた地元関西のリンクで、女子の坂本が再び頂点に立った。それも非公認ながら自己ベストを大幅に更新する圧巻の演技で。力の限りを出し尽くした20歳は、勝利を確信すると氷上でゆっくりと両腕を突き上げた。
2季連続で「マトリックス」を演じるのは昨季の悔しさがある。満足のいく演技ができずに表彰台を逃し続けた。「このまま終われない」。コロナ禍の自粛期間中、過酷な陸上トレーニングを自らに課した。「きついけど、試合で笑顔になれるように」と必死で言い聞かせた。
蓄えた体力は、ずば抜けたスピードと安定感に磨きをかけた。全てのジャンプで加点を引き出し、ステップとスピンも最高難度をそろえた。見どころは演技終盤も。リンクのフェンスぎりぎりに迫り、蹴り上げた靴の刃をジャッジに見せつけるように滑ると会場のどよめきを誘った。
「ノーミスやったら、こんなに出るんだ。1カ月半の追い込みは無駄じゃなかった」。台頭するロシア勢のような4回転を入れなくても、世界とまた戦える-。確かな自信を取り戻した。昨季6位に沈んだ全日本選手権まであと1カ月足らず。「『やったったぞ』と言えるような演技をしたい」と笑顔で日本一奪還を誓った。(山本哲志)
