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シリーズ19 手や腕、肩の病気

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(左)は辻田さんの手術前。第1中手骨の底が外側にずれている。(右)は1年後。大菱形骨がなくなり、第2中手骨の底に小さなねじが埋め込まれている(いずれも田中寿一教授提供)
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(左)は辻田さんの手術前。第1中手骨の底が外側にずれている。(右)は1年後。大菱形骨がなくなり、第2中手骨の底に小さなねじが埋め込まれている(いずれも田中寿一教授提供)

  • (左)は辻田さんの手術前。第1中手骨の底が外側にずれている。(右)は1年後。大菱形骨がなくなり、第2中手骨の底に小さなねじが埋め込まれている(いずれも田中寿一教授提供)

(左)は辻田さんの手術前。第1中手骨の底が外側にずれている。(右)は1年後。大菱形骨がなくなり、第2中手骨の底に小さなねじが埋め込まれている(いずれも田中寿一教授提供)

(左)は辻田さんの手術前。第1中手骨の底が外側にずれている。(右)は1年後。大菱形骨がなくなり、第2中手骨の底に小さなねじが埋め込まれている(いずれも田中寿一教授提供)

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こすれる骨を除去 関節作り直す
 痛み緩和、機能も維持 医療用ねじ使い傷小さく

 兵庫県尼崎市の主婦辻田典子さん(51)は2010年の夏ごろから、タオルを絞ったり物を握ったりすると、左手親指の付け根がズキズキと痛むようになった。患部は腫れ、次第にこぶのような骨の出っ張りができた。心配になってインターネットの検索サイトで調べると、パソコン画面に見慣れない病名が現れた。

 「母指CM関節症」。親指(母指)の付け根の「第1中手骨(だいいちちゅうしゅこつ)」と手首の「大菱形骨(だいりょうけいこつ)」をつなぐ「CM(手根中手)関節」の軟骨が削れ、骨が直接擦れ合って痛みが生じる病気だ。中高年女性に多く見られ、45歳以上の女性の1割強は発症しているとされる。親指に力を入れたときに痛むのが特徴で、進行するとCM関節から骨が外側に飛び出し、親指が変形する。

 「私の症状とぴったり」。辻田さんは同年12月、母指CM関節症の手術数が多い兵庫医科大病院(西宮市)を訪ねた。

約1時間で

 左手のエックス線写真を撮ると、大菱形骨の関節面から第1中手骨が3分の1ほど外側にずれていた。さらに、軟骨がすり減って骨が直接ぶつかり合った所に「骨棘(こつきょく)」と呼ばれる小さな突起が複数見つかった。

 「母指CM関節症で間違いない。進行具合は4段階あるうちのちょうど真ん中辺り。薬や装具で様子を見てもいいし、思い切って手術してもいいと思う」

 同病院整形外科教授で主治医の田中寿一さん(61)は、エックス線写真を見せながら病状を話し、手書きのイラストで手術法について説明した。

 辻田さんは「1時間ほどの手術で痛みと不便な生活から解放されるなら、ぜひ受けたい」と、手術を希望。11年1月、大菱形骨を取り除いて関節を作り直す「関節形成術」を受けた。

主婦にお勧め

 関節形成術は10年ほど前から普及。CM関節を動かないように固定する従来法「関節固定術」と比べ、手術後に握力は多少落ちるものの、CM関節の機能は残せる。

 「家事などで指を動かす機会が多い主婦らには形成術がお勧め。力仕事をよくする男性には固定術を勧めることが多い」と田中さん。

 関節形成術の関節機能の残し方は、親指周辺の腱(けん)を利用したり人工関節を使ったりとさまざま。同病院では、第1中手骨と腕の筋肉をつなぐ「長母指外転筋腱」の一部を縦半分に裂き、片方を第1中手骨と第2中手骨に開けた穴に通して、医療用の小さなねじで固定する。他の方法と比べて簡便で、傷も小さい。人工関節を使った場合の破損や素材による炎症といった合併症もなく、痛みを取り除ける。

 辻田さんは「切った所は手の甲の親指付け根と人さし指の下、手首の合わせて3カ所。傷は約1センチずつ。もう消えているでしょ」と、左手を差し出してにっこり。手術は全身麻酔で受けたが、麻酔から覚めた後、すぐに一人でトイレに行けるほど体への負担は少なかったという。入院も3泊4日で済んだ。

 ただ手術中、出血量を抑える必要性から肩に近い上腕を強く締め付けたため、術後は長時間正座した後のようにしばらく手がしびれた。

高齢化で急増

 抜糸までの2週間は、ギプスをつけて安静に。「そうはいっても主婦は忙しい。ゴム手袋をはめて食器を洗っていた」と辻田さん。抜糸後は、ギプスから親指の動きを制限する小さな装具に切り替え、徐々に親指の可動域を広げていった。「手術から1年。ずっと手を動かさないでいると、たまに左手がチクチク痛むけれど、タオルは思い切り絞れるし、日常生活に不便はない。手術して良かった」とほほ笑む。

 同病院の田中さんは「母指CM関節症の原因は加齢や親指の使い過ぎ、脱臼、骨折など。近年、高齢化で患者数は急増している」と指摘。「親指の付け根に起きる『ドケルバン腱鞘炎(けんしょうえん)』や、リウマチによる関節炎と間違えている患者もいる。気になる人は日本手外科学会の専門医を受診してほしい」と呼び掛ける。

(坂口紘美)

◆メモ

ドケルバン腱鞘炎

 親指の第2関節と腕の筋肉をつなぐ「短母指伸筋腱(たんぼししんきんけん)」と「長母指外転筋腱」を束ねる筒「腱鞘(けんしょう)」が、親指の使いすぎで分厚くなったり腱が傷んだりして炎症が起きる。更年期や子育て中の女性、手指をよく使う職業の人が発症しやすい。母指CM関節症と同じように親指の付け根に痛みや腫れが見られるが、注射による治療や手術の方法は母指CM関節症の場合と大きく異なる

2012/1/7
 

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