【てくてく神戸】布引編(4)擬木の手すり 大正期製造か、登山道ずらり

2022/11/02 05:30

登山道沿いに連なる擬木の手すり=神戸市中央区葺合町

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 布引谷を歩いていると、神戸大学特命講師の小代薫さんに聞かれた。何かの木だろうか? 小代さんは「これですよ」と道沿いに連なる手すりをポンとたたいた。木のようで木ではない…。これが擬木(ぎぼく)だった。よく見ると、登山道に沿って擬木の手すりが並ぶ。文字通り木にそっくりだが、実はモルタルに色を付けた物らしい。
 「これ、実は約100年前、大正の頃に作られた可能性が高いんですよ」
 驚いた。数え切れないほどの登山者の手助けになったであろう擬木の手すりだが、ほとんど老朽化していない。1級建築士でもある小代さんは「これだけでも貴重な文化財ですよ」と声を弾ませた。
 木の皮がむけた感じや、虫に食われたり枝を切り落としたりした跡、自然に曲がったように見せた技術、どれもが一級品だという。本物の木と間違う人もいるだろう。「腕もすごいですが、これを作った大工さんは楽しんだんでしょうね」。小代さんは手すりを見回しながら思いをはせた。
 手すりが100年前に作られたと推測できる理由は二つあるという。
 一つは近くのおんたき茶屋に残る大正時代の写真。人物の後ろに写り込んでいる擬木が現在の物とそっくりなのだ。もう一つは、茶屋のそばにある「布引山去来軒」と彫られた擬木。茶屋は1914(大正3)年に現在の名称になっているので、その頃の大正時代前後か、もっと前に作られた可能性が高いそうだ。
 文化財級の擬木。改めて見ると、素人でも「本当に100年前に作ったの?」と驚く。これから布引谷を訪れる方は、ぜひ間近でご覧ください。(安福直剛)
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