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キャッチコピーは「お値段異常」 快進撃の家具店

2020.01.25
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土日の恒例となっている長蛇の列=加古川市東神吉町出河原、BIGバリューイオンタウン加古川直営店

土日の恒例となっている長蛇の列=加古川市東神吉町出河原、BIGバリューイオンタウン加古川直営店

家具が所狭しと陳列されている店内=加古川市東神吉町出河原、BIGバリューイオンタウン加古川直営店

家具が所狭しと陳列されている店内=加古川市東神吉町出河原、BIGバリューイオンタウン加古川直営店

そろばんを製造していたころの光景=小野市内(ヤマソロ提供)

そろばんを製造していたころの光景=小野市内(ヤマソロ提供)

 「お値段異常」-。刺激的なキャッチコピーで、兵庫県加古川市と小野市にある地場のアウトレット家具店「BIGバリュー」が、快進撃を続けている。「異常」の代表格が、毎週末の1円セール。数万円する家具も1円で購入でき、100人を超す行列が週末の名物になっている。「田舎だからこそできる商売」と同店。大手にどう対抗しているのか、企業戦略を取材した。(広岡磨璃)

 運営会社は家具製造・卸・販売のヤマソロ(小野市)。小野市と、加古川市のショッピングモール内に直営店2店舗を構え、毎週土日は「1円セール」でアピールする。

 12月中旬の加古川直営店。午前10時の開店前に、続々と車が集まってくる。瞬く間に店頭には約100人の列。以前は先着順だったため徹夜組もいたが、現在は抽選制。並んだ順にくじを引き、客は抽選番号順にチラシの中から好きな商品を選択。開店後、1円玉で支払う。毎週のように訪れるという同県高砂市の自営業の女性(50)は、お目当ての1人掛けソファ(3万円相当)を手に入れた。

 「家具店でのワンコインセールは、うちが先発組です」と村田一雅店長(35)。100円からスタートし、10円、1円と激安ぶりはエスカレート。計50万円相当の商品を約100点、土日ごとに用意する。店長は「もちろん赤字。まず店のことを知ってもらえれば、1円以外の商品も、いかに安いか分かってもらえる」とPR効果を強調する。

 約1600平方メートルの店内には、天井近くまで家具がぎっしり。常時数千点以上を陳列し、「7割引」「8割引」などの値札が躍る。学習机などの季節商品も通年販売する。

 安さの秘訣は、大量仕入れと在庫保有力。小野市と周辺にある物流センターは12棟で計約2万3千平方メートル。今年さらに3千平方メートルの新センターが加わる。利益を倉庫建設につぎ込み、コンテナで商品を仕入れる。「土地の安い田舎だからこそ、広い倉庫を確保できる」と村田店長。一括購入によって物流などのコストを圧縮でき、単価を下げられる。さらに、会社が製造や卸も行っているため、自社製品を卸価格で販売できる。

 店ができた2011年と比較し、売り上げはほぼ倍の22億円に。派手な外観で道行く車にPRし、店内はディスカウント店「ドン・キホーテ」のようなうず高い陳列。コピーの「お値段異常」は、家具大手ニトリのテレビCMで流れる「お、ねだん以上」をもじった。そのニトリの近くには、必ず看板を設置する。奇をてらうような戦略も「全部まじめにやっている」と村田店長。地場の家具店の挑戦は続く。

     ◇     ◇

 ヤマソロは、アウトレット家具を格安で販売する「BIGバリュー」で知名度を上げているが、実は、そのルーツは小野市の地場産業そろばんだ。

 1928(昭和3)年、そろばん製造販売の「山本算盤店」として創業した。電卓の普及で、60年をピークに需要が低下。小野では、そろばん玉の加工技術を生かした玉のれんの製造が始まり、同社も玉のれんに活路を見いだす。そろばんの仕事が減った地元職人に発注し、壁掛けミラーやスリッパラックなど小物にも手を広げ、全国の家具店に卸すようになった。74年には自前の家具店を構える。

 「場所も取るし、動かすのも大変。非効率な家具販売業には、大手が入ってこないと思っていた」と山本一郎社長(56)。しかし、ニトリやナフコなど大手が地方にも店舗網を広げ、家具店は業態の転換を強いられる。ヤマソロは2011年、高級路線からアウトレット店にくら替えした。

 家具に活路を見いだしたそろばん業者は少なくない。播州算盤工芸品協同組合(小野市)の組合員は現在7社。ヤマソロなど半数以上が家具を主軸にしている。ヤマソロは組合の副理事長を務め、現在もそろばんを販売。山本社長は「そろばんは会社のルーツであり、灯を消してはいけない」と話す。(広岡磨璃)

【流通科学大の清水信年教授(マーケティング論)の話】

 地場産業の産地は消費者のニーズにかなうものを作れず衰退しているが、ヤマソロは商品企画力を培うことで時代の変化に対応できている。店舗がニーズをキャッチする役割を果たしているのではないか。