経済
グローリー、画像認識技術を医療・福祉分野へ活用
貨幣処理機大手のグローリー(兵庫県姫路市)は画像認識技術について、福祉・医療分野への展開を強化する。介護施設での事故を未然に防いだり、コンピューター断層撮影(CT)画像診断を専門医から人工知能(AI)に置き換えたりするシステムを開発する。消費税増税でキャッシュレス化が進む中、貨幣処理機で培った技術をてこに事業領域を拡大させる。(塩津あかね)
同社はこれまで、人の出入りが多い商業施設やマンション、ホテルなどに同機器・システムを納入してきたが、福祉施設や医療機関でも需要が拡大すると判断した。
介護施設の入居者の見守りサービスを提供するエコナビスタ(東京)と業務提携し、グローリーの顔・骨格認証技術を組み合わせたシステムを開発する。あらかじめ入居者の顔を登録しておき、このうち認知症の人が単独で戸外に出るのを防ぐ。家族や職員が同伴している場合は自由に外出できるようにする。
また、カメラの映像から人の骨格や姿勢を検知する骨格認識技術を使い、ベッドや車椅子などから転落した場合に、介護スタッフに即座に知らせる。高さや動きの速度も検知するため、ベッドの上で寝返りをした場合などと区別して誤報を防ぐ。介護業界は人手不足などの問題を抱えるが、スタッフの負担軽減にもつながるという。2020年春の実用化を目指す。
医療分野では、19年7月に兵庫県立大と共同で「医工学共同研究講座」を開設。専門医がCT画像を見て診断する水準と同等の画像診断をAIで代替できるようにする。AIの画像診断システムの開発拠点を、22年度に完成予定の「県立はりま姫路総合医療センター(仮称)」に移す。
すでに19年6月には順天堂大がキリンホールディングスなど4社と行う産学共同研究に参画。パーキンソン病や認知症の早期発見、進行度を診断できるシステムを構築する。笑顔の度合いを数値化するグローリーの技術を診断基準の一つに活用するほか、20年度には意図的に笑顔をつくると、認知症などの進行を遅らせることができるかなどを検証する。
同社研究開発センター長の亀山博史上席執行役員は「健康な人で蓄積した顔認証などのノウハウを、医療・福祉分野でも活用したい」と話した。



















