経済
新型肺炎、対応急ぐバス会社 マスク生産フル稼働へ
感染の広がりを見せる新型コロナウイルスは、28日に奈良県で国内初の人から人への感染が確認された。感染者がバス運転手ということもあり、兵庫県内で運行するバス会社でも、運転手にマスク着用を義務付けるなど急きょ対応した。感染予防に多くの人がマスクを買い求め、店頭やネット販売で売り切れが続出。神戸市内のマスクメーカーは供給を間に合わせるため、工場のフル稼働を目指す。
神戸や東京、姫路や関西空港を結ぶ高速バスを運行している神姫バス(同県姫路市)は、29日から全運転手にマスクの装着を勧めた。中でも、訪日外国人向けツアーなどの貸し切りバスを運行するグループ会社の神姫観光バス(同市)では着用を義務化して警戒する。
同社神戸営業所(神戸市中央区)では、運転手が乗車前の点検で担当者からマスクを受け取った。同社は30日から順次、バス内に消毒液を置くという。
神姫バス担当者によると、ツアー利用者はアジア圏が多く、その集客は営業の柱の一つといい、「今年は暖冬でスキーツアーがだめになったこともあり大打撃。感染がさらに広まっていくのか不安です」と打ち明けた。
西日本ジェイアールバス(大阪市)は、中国人の移動が多い春節に合わせ、23日から運転手とチケット売り場担当者約600人にマスクを配布している。同社はマスクを着けての接客を禁止しているが、窓口に「マスクでの接客は感染症予防のためです」などと書いて張り出した。
外国人利用者が比較的多い大阪-有馬温泉や大阪-神戸三田プレミアム・アウトレットなどの路線を持つ同社。担当者は「バスは密閉された空間。予防策として人混みを避けるとあるが、利用者に旅行をやめてくれとは言えない」と困惑した様子で話した。(篠原拓真)
◇ ◇
カナダに本社を置く衛生用品メーカー「メディコム」のアジア法人(香港)。神戸市中央区にある同法人の日本支店では、新型コロナウイルスの報道が過熱し始めた23日ごろから注文が殺到し、「市販用マスクの在庫がほぼない状態」という。
支店担当者によると、これまで取引のなかったスーパーやドラッグストアなどから依頼が舞い込んでいるとみられ、受注は平時の10倍ほどに急増。すでに在庫が尽き、ほとんど出荷できていないという。
主力の医療機関向けも通常1日10ケースの受注が、最大で千ケースに増加。担当者は「国内での感染拡大に備えているのだろう。病気の全容がはっきりしないだけに、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)の時よりも深刻な印象だ」と話す。
アジア法人は上海の自社工場でも生産しているが、春節休暇の延長などで先が見通せない。支店担当者は「中国本土でのマスク需要もあり、今後、日本国内への供給がどうなるか分からない」と不安を口にした。(中務庸子)