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ホットビール「冬の定番」へ挑む 専用サーバー開発、貸し出し

2020.01.30
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ビールを50~60度に温めて楽しむホットビール。神戸学院大の学生とPRに挑む=宝塚市駒の町、阪神競馬場

ビールを50~60度に温めて楽しむホットビール。神戸学院大の学生とPRに挑む=宝塚市駒の町、阪神競馬場

ホットビールサーバーの特徴を説明する精和工業所の原克彦社長(左)=神戸市西区伊川谷町

ホットビールサーバーの特徴を説明する精和工業所の原克彦社長(左)=神戸市西区伊川谷町

 日本ではなじみのない「ホットビール」を冬の新たな飲み物として定着させようと、兵庫県伊丹市内の2企業が市場の開拓に長年挑んでいる。飲食店などで提供しやすいように、ビールを簡単に温めて注げる専用サーバーを一から開発。改良を加え、貸し出しサービスを提案するなど導入のハードルを下げる工夫を重ねている。(中務庸子)

 ホットビールは50~60度に温めたビール。ベルギーでは鍋で熱したり、湯せんしたりして楽しまれている。日本では大手ビールメーカーが新しい飲み方としてウェブサイトなどで提案したことがあったが、市場はないに等しい。

 普及に取り組むのは、小西酒造と精和工業所。小西酒造は日本酒製造の傍ら、約30年前にベルギービールの輸入を始めてホットビールを知った。アルコール度数の低いホットビールなら酒に弱い人や若者の冬場の需要を喚起できると考えたが、飲食店用の専用サーバーがなく、諦めていた。

 転機は2012年。伊丹商工会議所の会合で、小西酒造の小西新太郎社長(67)が、ステンレス溶接の高い技術を持つ精和工業所を知り、専用サーバーの開発を依頼した。翌年、温水器のノウハウを利用し、コックを引くだけで、常温のビールを注ぐ直前に加熱できるサーバーが完成。ビールは、温めた時の香りの良さを重視し、小西酒造が取り扱うベルギーのフルーツビールを使うことにした。

 満を持して飲食店に売り込むと、1台数十万円のサーバーへの反応は悪かった。いわく「冬場しか使わない機械は置けない」「流行したら考える」…。

 飲食店が駄目ならばと、屋外のフードイベントに出店して消費者にアピールすることにした。サーバーのサイズが通常の1・3倍あり、移動式の設営に向かないため小型に改造。16年ごろにようやく初出店にこぎ着けた。イベントでは女性を中心にじわりと人気が出て、横浜では10日間で4千杯売り上げたこともある。

 昨年から、飲食店向けの新戦略で攻勢をかける。サーバーは、ビールを販売するメーカーなどから借りて初期投資を抑える方式が一般的。精和工業所は昨年12月に酒販免許を取り、フルーツビールを購入した事業者にサーバーを貸し出すことにした。さらに、通年でサーバーを使えるように、スイッチ一つで冷温にも切り替えられるように改良した。神戸学院大生とPR方法の研究も行っている。

 同社の原克彦社長(44)は「キッチンカーなどにも広げていけるのでは」と話し、小西酒造の小西社長は「市場をつくるのは大変だが挑戦を続けたい」と意欲をみせる。

 ホットビールは、2月2日に神戸市須磨区のユニバー記念競技場で開催されるラグビートップリーグのイベントブースに出店、販売する予定。