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神戸を売り込むスゴ腕「伝道師」 首都圏で活動中

2020.02.08
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神戸市の職員と打ち合わせをするエバンジェリストの乾洋さん(左)と栗山麗子さん(右)=東京都千代田区、ウィーワーク丸の内北口

神戸市の職員と打ち合わせをするエバンジェリストの乾洋さん(左)と栗山麗子さん(右)=東京都千代田区、ウィーワーク丸の内北口

 自社の技術やサービスを広く伝える専門職「エバンジェリスト」。キリスト教の伝道師を意味し、営業にも広報にも属さない。日々進化するIT業界で定着している新しい職種だが、神戸市が自治体として全国に先駆けて導入した。昨年10月に採用された民間企業出身の2人が、首都圏で神戸の魅力を発信し、起業間もないスタートアップ企業の誘致や移住などにつなげようと奮闘している。(今福寛子)

 「これからはスタートアップも大企業も神戸でビジネスの機会が多くなる」。昨年12月、地方で働く魅力をテーマにしたイベントが、神戸市の入居する共有オフィス「ウィーワーク丸の内北口」で開かれた。エバンジェリストの乾洋さん(52)は、国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS、ユノップス)の拠点が設けられることを一例に挙げながら神戸を売り込んだ。2人の使命は神戸のファンをつくることだ。

 同市によると、自治体が「エバンジェリスト」を導入するのは全国初。オリックスで金融事業に関わり、マレーシアの現地法人で最高経営責任者(CEO)を務めた乾さんと、日本製粉で栄養価の高い「アマニ」を大ヒット商品にした栗山麗子さん(45)が採用された。任期は3年だ。

 2人が所属するのは、スタートアップの誘致や支援を担当する新産業課。米シリコンバレーのベンチャーキャピタルと起業家育成プログラムを進めるなど、先駆的な取り組みを打ち出す部署だ。人口減少が進む中、同課担当者は「神戸のスタートアップに対する取り組みは、首都圏プロモーションのキラーコンテンツ(切り札)になる」とし、エバンジェリスト採用の狙いを話す。

 同市北区出身の乾さんは「地元のために何かしたかった」と企業役員の地位を捨てて転職した。まずは神戸を知ってもらうため、スタートアップが参加するイベントに積極的に顔を出す。海外で仕事をした経験からアジア企業の誘致も見据え「東京や海外から人や企業が神戸に行く流れをつくりたい」とする。

 エバンジェリストが担当する仕事はスタートアップ誘致にとどまらない。栗山さんは観光や移住促進に重点を置く。就任後すぐ、首都圏のファミリー層向けに同市の取り組みを伝えるアプリの開発に着手し、開発業者を公募するなど事業化に向けて動き始めている。

 前職では、100億円といわれる「アマニ」の市場を一から作り上げた。テレビ通販番組にも出演した経験から、商品の見せ方を知り尽くす。「東京から見ると関西は遠い。どう埋めていくか考えたい」と話した。

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■企業誘致へ共用オフィス活用/地方自治体、接点求め進出

 東京一極集中が加速する中、各自治体は首都圏での情報発信に工夫を凝らす。企業とのつながりを求め、新たな場として注目しているのが共用オフィスの「ウィーワーク」だ。神戸市のエバンジェリストは、ウィーワークに拠点を置く成長企業に照準を合わせようとの発想から生まれた。

 入居するのは個人やスタートアップ企業だけでなく、大企業など多種多様。地方で働く魅力などをテーマにさまざまな催しが開かれ、企業同士をつなぐ機能を持つことが人気の秘密だ。

 そこに目を付けた約20の自治体がウィーワークに入居している。2018年10月にいち早く拠点を設けたのが静岡市。それまでの製造業中心の企業誘致から、新たな業種へのアプローチに乗り出した。入居2日目に名刺交換した際の立ち話から、家電量販店のコジマと地方創生の推進に向けた連携協定を結んだ。担当者は「コミュニケーションを目的に集まっている企業が多い」と入居の意義を強調する。

 熊本市は月に1度、地元企業を招いて接点をつくり、結び付ける試みをしている。担当者は「これほど多くの企業と出会える場所はなく、つながりを広げていけたら」と話している。