ひょうご経済プラスTOP 経済 変わる自動車販売店 地域密着に活路 マイカー離れに危機感

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変わる自動車販売店 地域密着に活路 マイカー離れに危機感

2020.04.30
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生協の商品の受け渡しに当たる作業着姿のスタッフ=神戸市西区糀台5、ネッツトヨタ兵庫西神中央店

生協の商品の受け渡しに当たる作業着姿のスタッフ=神戸市西区糀台5、ネッツトヨタ兵庫西神中央店

手作りイベントで子どもらと交流する自動車販売店員(トヨタカローラ姫路提供)

手作りイベントで子どもらと交流する自動車販売店員(トヨタカローラ姫路提供)

自動車販売店内で披露されたレンタル移動販売車=西宮市城ヶ堀町、ネッツテラス夙川

自動車販売店内で披露されたレンタル移動販売車=西宮市城ヶ堀町、ネッツテラス夙川

 ある店は、町のイベントに移動販売車を貸し出し、またある店は、祭りの夜店さながらに子どもらを迎える-。トヨタ自動車系列のディーラーが、地域密着作戦を繰り広げている。自動車産業は、カーシェアリングの普及や自動運転車の開発で100年に一度といわれる変革期。業界ではマイカー離れの危機感も強まり、独自の取り組みを競う販売店は今後も増える?(中務庸子)

 昨年11月下旬、トヨタ系列の販売店「ネッツテラス夙川」(兵庫県西宮市)に地元の商業者10人が集まった。お披露目されたのは、市販の大型バンを改装した「レンタル移動販売車」だった。

 後部のトランクを開けると、高さ約1メートル、長さ約3メートルの商品棚を引き出せる。荷室に積まれた付属の机などを並べ、あっという間に即席のお店が完成する。

 移動販売車は、通常の店舗に比べて初期投資が抑えられるため開業者に人気だが、レンタルはさらに安く済む。同店を運営するネッツトヨタ神戸(尼崎市)は、野菜や菓子、おもちゃの販売、野外の体験教室などでの利用を想定。阪神間で貸し出している。

 地域活性化への貢献を目指し、担当する同社営業本部の小川敏子さんは「地元企業が元気になることが、巡り巡って車の購入につながる」と話す。保育園の催し物なども含め、商店に限らず申し込みに応じる。

 トヨタカローラ姫路(姫路市)は、0歳から小学6年の子どもが店の会員になる「カロ姫キッズクラブ」を2016年から設けている。夏祭りやクリスマスの時期に、店員が手作りしたゲーム大会などを催す。

 当初は顧客の家族に限ったが、広く参加を募る形に変え、会員数は6千人を超えた。「将来の顧客」である子どもたちに気軽に来店してもらい、車に興味が湧くよう期待する。

 ネッツトヨタ兵庫(神戸市中央区)は、生活協同組合コープこうべ(同市東灘区)と連携。コープのカタログで注文した商品を週1~2回、ネッツ兵庫の店頭で受け取れる。18年秋に始め、ほぼ全店に広げた。

 営業時間内の好きな時間を選べるため好評で、多い店では毎回約20組が利用する。店員が商品を渡し、家計を握る主婦らと新たに接点ができた。

■新車販売台数減少、運転しない人も重要な顧客

 日本自動車販売協会連合会(自販連)などの統計によると、新車総販売台数のピークは、ちょうど30年前の1990年の約777万台だった。その後は少子高齢化などで減少傾向が続き、2019年は約520万台にとどまった。

 近年はさらに、スマートフォンの普及に伴ってカーシェアリングが生まれた。あらゆる交通手段を一体的に提供するMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の研究も進む。

 トヨタ自動車は市場の変化に対応するとして、今年5月から「トヨタ」「トヨペット」「カローラ」「ネッツ」の4系列ディーラーが、いずれも全車種を扱えるようにする「併売」を打ち出している。

 兵庫県内は9社の地場オーナーが店舗を展開し、系列ごとにすみ分けていた。ネッツトヨタ兵庫の小林正樹取締役は「どこでも同じ車が買えるようになれば、店の雰囲気や店員の対応がますます重要になる。地域貢献の結果、選ばれる店になればうれしい」と話す。

 トヨタは、メーカーから移動サービスを提供する「モビリティカンパニー」へ事業を広げようととしており、販売会社にも対応を求める。自動車市場に詳しい流通科学大学の清水信年教授は「これからは車を買わない人、運転しない人も、販売会社にとって重要な顧客になり得る。トヨタ以外のディーラーでも独自の動きが出てくるだろう」と指摘する。