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モスク用スピーカー販売、思わぬ苦戦 ラマダン商戦、コロナ禍でふい 音響のTOA

2020.06.06
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TOAのスピーカーを取り付けたモスクの尖塔(同社提供)

TOAのスピーカーを取り付けたモスクの尖塔(同社提供)

アザーンの拡声に使われるタイプのスピーカー(同社提供)

アザーンの拡声に使われるタイプのスピーカー(同社提供)

 音響機器メーカーのTOA(神戸市中央区)が、イスラム圏で高いシェアを誇るモスク(礼拝所)向けスピーカーの販売で、思わぬ苦戦を強いられている。年間を通じて最も商戦が盛り上がるラマダン(断食月)と、新型コロナウイルス感染拡大のタイミングが重なったためだ。コロナ禍の収束が見通せない中、現地の動向をにらみながら巻き返しを図る。

 スピーカーは、祈りの時を知らせる「アザーン」をモスクのミナレット(尖塔)から街中に拡声したり、モスク屋内で聖職者によるコーランの朗読を伝えたりするのに使われる。

 イスラム圏各国で多くの納入実績を持つが、特にイスラム教徒人口が約2億人と世界最多のインドネシアでは1976年に現地生産を開始。80万カ所に上るモスクの8割以上が同社製品を使っていると推定され、「TOAの旧社名にちなんでモスク尖塔のスピーカーは『トーア』と呼ばれる」(同社)という。

 日の出から日没まで飲食を断つラマダンには、貧しい人の気持ちを体感する目的があり、寄付も盛んになる。使い道の一つがスピーカーで、モスクの新規建設や設備の更新、改良に伴う需要が生じる。同社は毎年、ラマダンと前後の1カ月間に割引価格を打ち出して取り込んできた。

 ところが今年のラマダン(4月23日~5月23日)は、新型コロナによる経済停滞や外出制限によってモスクに集まる寄付が減り、水道修理など生活に直結する使い道が優先された。また、マレーシアなどでは電気街も閉鎖され、モスク関係者が例年のように買い出しに行けなかったという。

 屋外用は大音量でも音が割れないように中音域を強調する一方、屋内用は聖職者の声を神々しく響かせるなど、現地ニーズに応えようと努力を重ねてきただけに、同社の担当者は「寄付やそれに伴う購買は遅れて行われる可能性があるため、キャンペーン期間を延ばすなどして対応したい」と話している。

 同社の2020年3月期連結売上高は約450億円。このうちアジア・パシフィック向けは約74億円だったが、“ラマダン需要”の減少などで21年3月期は約62億円になりそうという。(長尾亮太)