ひょうご経済プラスTOP 経済 町工場試練、忍び寄る廃業「正念場はこの夏以降」 

経済

町工場試練、忍び寄る廃業「正念場はこの夏以降」 

2020.06.17
  • 印刷
新型コロナウイルスのあおりで自動車部品の受注が減った町工場=尼崎市内

新型コロナウイルスのあおりで自動車部品の受注が減った町工場=尼崎市内

 新型コロナウイルスの感染拡大で、大手メーカーを支える町工場が正念場を迎えている。春先はコロナ禍の前に受注していた仕事で操業を維持できたが、納入先である大手の操業回復が鈍く、町工場の経営悪化が顕在化しつつある。(長尾亮太)

 「リーマン・ショックの時でも、仕事はこんなに減らなかったのに…」

 神戸市内でゴム部材を加工する町工場の男性経営者(72)はため息をつく。

 時折しか機械が動かない建物内は静かで、従業員14人の多くを休ませているため、人影もまばらだ。

 売り上げの5~6割を占める主力の自動車向けは、米中貿易摩擦のあおりで年明けから受注が減り始めた。さらにコロナ禍によるメーカーの減産が追い打ちをかけ、3月以降、受注は落ち込んだままだ。

 収入は減っても、人件費や工場の賃料、原材料費などがのしかかる。運転資金は金融機関から工面するつもりだが、いずれ返済負担が経営を圧迫する。

 「先々のことは考えたくない」。男性はつぶやく。

■遅れて出る影響

 「外出自粛で営業活動ができず、5月以降に影響が出る」「展示商談会の中止で受注の機会を失った」

 中小製造業約270社でつくる神戸市機械金属工業会が4月に行ったアンケート(95社が回答)で、コロナ禍による経営への影響が「すでにある」とした企業は57%(54社)。「今後あるだろう」を合わせると、93%(88社)に影響しそうだ。

 「資金繰りに響いている」との回答は31%(29社)だが、同会の阿知波(あちわ)規之会長(60)は今後、さらに増えるとみる。川崎重工業など地元大手が設備投資を抑える方針を示しており、「中小企業にもボディーブローのように効いてくる」と警戒する。

 帝国データバンク神戸支店によると、不況の影響は小売り・サービス▽卸・物流▽製造-と、消費者に近い業種から順に受ける。製造業では、消費者向けの自動車や二輪車などのメーカーがいち早く影響を受けたが、担当者は「中小部品メーカーの正念場はこの夏以降」とみる。

■傷つく供給網

 「第三者に事業を譲るつもりだったが、それまで続けられるだろうか」

 神戸市内で素材加工会社を営む男性(70)は、取引先のファッション業界が毎年春に開く商談会がなくなり、受注の機会を失った。手持ちぶさたな日々。会社を畳む考えもちらつく。

 総務省によると、兵庫県内で製造業の事業所数は2016年に1万8155。前回調査(12年)から1252(6・5%)減った。「後継者がいなくて廃業する企業は多い。コロナ禍で事業環境の好転が期待できず、

廃業を決断する経営者が増えるのでは」と県内の金融関係者は気をもむ。

 一方、町工場に仕事を発注する大手企業は支援に動きだした。東証1部上場の表面処理加工会社、トーカロ(神戸市中央区)は、納品を受けてから協力会社に代金を支払っていたが、必要なら発注時に先払いして資金繰りを支える方針だ。

 三船法行社長は「町工場は当社の事業存続に欠かせない存在。この難局をともに乗り切りたい」と力を込める。

【記事特集リンク】新型コロナウイルス