ひょうご経済プラスTOP 経済 <地を担う>(1)農事組合法人・八幡営農組合(加古川市)

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<地を担う>(1)農事組合法人・八幡営農組合(加古川市)

2020.06.23
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デュラム小麦の国産初品種「セトデュール」を収穫する八幡営農組合の職員=加古川市八幡町下村

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 高齢化、人口減少を前に農地、地域を守ろうと挑む兵庫の農業法人を紹介します。

■大規模農地を一元管理

 甲子園球場の80倍超の農地が広がる兵庫県加古川市八幡町。そのほぼ全てで今年も作物が育つ。

 2005年5月、町内全農家642戸が各1万円を、JA兵庫南が300万円をそれぞれ出資。農事組合法人八幡営農組合を設立した。町内で目立ち始めた放棄田の解消が目的だった。耕作依頼は相次ぎ、設立時点で農地の3割超に当たる100ヘクタールが集まった。「地域の期待の大きさを実感した」。同組合の芦原安男代表(76)は振り返る。

 組合は国による減反でコメに換えて麦を転作。だが直後に転作奨励の補助金が減り、農機具購入や事務所建設の費用、職員の人件費などがのしかかった。

 収益力を高めるため、JA一辺倒だった出荷先を見直した。白大豆の全量を神戸の豆腐メーカーに出し、豆腐を買い取って組合事務所の隣に開業したJA直売所で売った。そばも自家製粉し、組合直営の飲食店で提供した。利益は穀物の数倍に上り、加工品の売上高は06年の1千万円から11年に6千万円を超え、初の経常黒字も実現した。

 生産でも効率化を図る。地図情報を活用し、千カ所以上の農地の状況を一元管理するシステムを07年に全国に先駆けて導入。大規模農地でも多収穫を確保する大豆新品種も開発した。日本製粉(東京)の依頼で、パスタに最適なデュラム小麦で初の国産品種の栽培試験に協力。16年に同社が製品化し、組合も「加古川パスタ」として飲食店などに納める。

 設立15年で経営面積は約1割増えただけ。だが今年、形がよく育てやすいはずの農地の耕作依頼が舞い込んだ。「いよいよ高齢で続けられない農家が出始めた。八幡を守るため、もうけて人を増やさなければ」。芦原代表が力を込めた。(山路 進)