経済
西神店の後継発表 地元商業者、利用客に安堵
そごう西神店(神戸市西区)の後継施設を運営する事業者の優先交渉権者が、大手商社の双日(東京)に決まった。昨年10月に同店の閉鎖が公表されてから約10カ月。ようやく“後任”が固まり、地元の商業者や利用客に安堵が広がった。複合商業施設として再出発する。商圏が重なる神戸市西部や明石市に点在する商業施設と差別化するため、店舗構成で独自性を打ち出せるかが注目される。(三島大一郎、中村有沙)
「百貨店がなくなると寂しくなると思ったが、これでにぎわいが保たれる」。隣接する商業施設「プレンティ」の専門店で働く女性(70)は声を弾ませた。写真館の店主(72)は「(優先交渉権者が)神戸にゆかりのある双日に決まって良かった」と歓迎した。双日が大正期に栄えた神戸の総合商社・鈴木商店を源流の一つにするためで、「広域から人が訪れる拠点になってほしい」と期待を寄せた。
立地する神戸市営地下鉄西神中央駅の周辺では、市が文化・芸術ホールや図書館、区役所新庁舎の整備を計画し、民間マンションの建設誘致も目指している。近くに住む主婦(68)は「子育て世帯がワクワク楽しめるような施設になってほしい」。高校生の娘とよく買い物に来るという会社員の女性(40)は「中高生ら若い女性に人気があるブランドの店舗が入ればうれしい」と注文を付けた。
一方、そごう西神で営業してきたテナント事業者の関係者は、閉鎖まで半月を切った発表に「これまで何の情報も伝わってこず、やきもきしていた。新施設に出店するかどうか、慎重に検討したい」と話した。
双日は、グループ企業が全国で複合商業施設の運営を手掛けている。その一つ、「ピエリ守山」(滋賀県守山市)は、外資系ファッション店を集積するなど、近隣にはない店舗を誘致。温浴施設や屋外アスレチックなど琵琶湖の景観を生かした施設も併設し、人気を集めている。
西神の新施設は、出店の継続を希望する既存テナントや利用客の要望を取り入れ、店舗の構成を決める。1階の食品フロアは地元地域のニーズが高いため、新施設でもこれまで同様の売り場が設けられる予定という。
小売業界に詳しい流通科学大商学部の白貞壬教授は、「周辺地域は競争相手となる商業施設が多い。これらと異なる明確なストアコンセプトを作る必要がある。駅直結のアクセスの良さを生かしつつ、若い世代やファミリー層を引き付けられる店舗を構成できれば集客は期待できるのではないか」と話す。