経済
但馬牛の繁殖用雌900頭増 25年ぶりの伸び幅
神戸ビーフなどになる兵庫県産の黒毛和牛「但馬牛(うし)」の繁殖用雌牛が、県内で2019年度に1万7100頭となり、前年度に比べて900頭の大幅増となったことが県の調べで分かった。高齢化による離農や新規就農の低迷などで伸び悩んできたが、農家に対する県の財政支援がようやく奏功。1994年度以来、25年ぶりの伸び幅となった。ただ、20年度の目標頭数(2万頭)を大きく下回っており、さらなる増頭を目指す。(山路 進)
県内の繁殖用雌牛は、94年度に2万2400頭いたが、05年度に1万4500頭にまで減った。県は、繁殖用雌牛を飼育する農家への補助金を拡充し、15年度に2万頭に増やす目標を掲げた。09年度までは年300~400頭増えたが、リーマン・ショック(08年)や牛の伝染病・口蹄疫(こうていえき)の国内発生(10年)などもあり、18年度までの9年間で増えたのは300頭どまり。目標頭数を据え置き、対策を続けてきた。
■閉鎖育種
増頭が足踏みした背景には、但馬牛のみを交配する「閉鎖育種」で極上の肉質を保つ但馬牛特有の事情がある。他産地の雌牛と交配させるわけにいかず、増頭には、肉用牛として出荷できる雌牛を繁殖用に回すほかない。
だが、神戸ビーフ、但馬牛(ぎゅう)が07年に地域団体商標となったのを機に、両ブランド牛肉の国内需要は拡大してきた。12年の輸出開始や外国人観光客(インバウンド)の増加もあって需給は逼迫(ひっぱく)し、繁殖用雌牛の増頭にはつながらなかった。
■転機
転機は16年、国が牛舎整備の補助制度を新設したことだった。1棟2千万~4千万円かかる経費の半額を農家に支給。県も独自に経費の約1割を上乗せ補助する。子牛・枝肉価格の上昇もあって、16~19年度に25戸の農家が約千頭分の牛舎を新設した。さらに繁殖雌牛を増やす際の補助金を拡充したことで、19年度の大幅増に結びついた。
農家数の減少とは対照的に、1戸当たりの飼育頭数は増加。40代以下の農家の割合も15年の10・1%から、今年は16・8%に増えるなど世代交代も進みつつある。
■コロナ
一方、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うインバウンドの減少や、飲食店の休業で神戸ビーフの需要は激減。価格も大きく落ち込む中で、県は消費拡大や学校給食への活用などで農家の支援を続ける。
県畜産課は「コロナ収束後の需要反転を見据えると、繁殖用雌牛2万頭の必要性は変わらない。20年度末の目標達成は厳しいが、しっかりと供給できる体制を整えたい」としている。
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【但馬牛】 兵庫県管理の雄牛と県内の農家が飼う雌牛を交配して産まれた牛。但馬牛同士の交配を続ける「閉鎖育種」という全国唯一の手法を踏襲する。繁殖農家で産まれた子牛は9カ月前後飼育された後、子牛市場に出荷。子牛を購入した肥育農家が約2年間育てて、枝肉市場に出荷する。神戸肉流通推進協議会が1983年から牛肉ブランド「神戸ビーフ」を、2002年から同「但馬牛(ぎゅう)」をそれぞれ管理する。子牛は三重や滋賀、山形などの肥育農家も購入し、特産松阪牛や近江牛、米沢牛などになる。




















