経済
クルーズ旅行大打撃 神戸港は半年以上も入港ゼロ
新型コロナウイルスがクルーズ旅行に大打撃を与えている。感染拡大で国内外の客船の多くが運航を中止。2月半ばから入港がストップした神戸港は、今年9隻を受け入れただけで、来年以降の外国客船の誘致もおぼつかない。大型客船「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染によるイメージ悪化も懸念され、回復の兆しがある旅行業界の中でも船旅はとりわけ苦しい。ツアーを売り出す会社は「まずは船の安全対策をPRしなければ」と危機感を強める。(田中宏樹)
神戸市によると、神戸港へは2018年に141隻、19年は134隻が入港。今年も同程度の隻数を見込んでいたが、1~2月に9隻が入ってからは9月末まで全てキャンセルとなった。10月以降の動きも見通せない状況だ。
「今年はもう外国客船の入港はないだろう」。神戸市客船誘致課の瀬沢孝至課長は声を落とす。日本船籍の客船では、神戸に頻繁に入港する「飛鳥2」が再開を目指すが、既に10月は断念した。
客船が港に入ると、乗客が街を観光するため地元への経済効果が生まれやすい。同課職員は欧米の船会社に直接出向くなど神戸への誘致に力を入れてきたが、海外への渡航制限が続く。瀬沢課長は「船会社は『誘致の話どころじゃない』といった雰囲気で、オンライン会議を開くことすら難しい」と頭を悩ませる。
外航、国内クルーズを楽しむ日本人が18年に過去最高の約32万人を記録するなど、クルーズ人気は高まっていた。だが、2月上旬に「ダイヤモンド・プリンセス」で集団感染が判明。同月、神戸港に別の客船が入ると、同課に「なんで船を入れるんや」と苦情があったという。
今後は船内だけではなく、受け入れる港にも感染防止策が求められる。瀬沢課長は「市民が客船に向ける目は厳しいだろう。コロナ前後の変化や対策を伝え、『客船イコール危険』という印象を払拭する必要がある」と話す。
一方、クルーズ商品を扱う旅行会社も影響は深刻だ。「飛行機で海外の港を訪れ、現地で船旅を楽しむ『フライ&クルーズ』は当面できない」とは、客船の旅行を専門とする「クルーズプラネット」(東京)の小林敦社長(56)。同社は海外発着分の旅行は、今年を想定した新商品を売り出さず、来年分の販売に重点を置く。
大手のJTBは8月、船会社の対策や再開の見通しを伝えるオンライン相談会を開始。同社クルーズ部の担当者は「船会社は万全の取り組みをするだろう。私たちが丁寧に伝え、クルーズの信頼回復に努めたい」と話す。
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