経済
高温耐性のコメ開発急ぐ 猛暑の年、質が低下 県など5年後流通目指す
猛暑で農業関係者がコメの出来栄えの悪化を懸念している。兵庫県立農林水産技術総合センター(加西市)は、地球温暖化に対応する主食用米の新品種開発を急いでおり、このほど開いた説明会に参加したJA職員や生産者から期待の声が相次いだ。(山路 進)
「早朝でも川や水路の水がぬるくなっている」「高温障害でコメが白くなっている」。説明会の参加者らは現場の異変を口にした。
稲作では、穂ができる「出穂(しゅっすい)期」から20日間の平均気温が27度を超えると、コメが白く濁り始めるとされる。透き通ったコメに比べ、精米時などに欠けやすい。品質は粒の太り具合などでも評価され、猛暑だった昨年や2010年、最上級の「1等」の割合が全国的に低下。九州など西日本で、高温に耐える新品種の開発が盛んになっている。
■1等米、半分以下
兵庫の新品種開発は16年に始まり、同センターで夏と冬の年2回栽培できるよう、四つの温室を改修。通常十数年かかる開発を最短9年間に短縮し、25年度の流通開始を目指している。
県は現在、おいしさや品質、気候への適合度などから、主食用米としてコシヒカリ、キヌヒカリ、ヒノヒカリ、きぬむすめの4品種を奨励。作付面積は県内水稲の約75%を占める。
高温の影響が最も大きいのはキヌヒカリで、この10年、1等米の割合はずっと50%以下。もともと高温に弱く、8月上旬に出穂するためだ。他の3品種はおおむね70~80%台だが、猛暑の年は質が低下した。出穂と高温が重ならないよう田植えの時期をずらすなどの対策をとるが、決め手にはなっていない。
■絞り込み
最初に着手したキヌヒカリの代替種開発は、コシヒカリや高温に強い品種など10組を交配。1万種の候補を作った。昨年からセンター内の田んぼで育て、出穂期や穂の付き具合で選別。今年は約200種まで絞る。高温にしたハウスでも栽培し、遺伝子を調査。試食も交えて代替種を決め、国への申請を経て25年産からの販売を目指す。他の品種も代替種の開発にかかっており、数年おきに完成させる計画だ。
「絞り込みの段階から栽培試験に参加したい」「食味が良ければ、いち早く生産に取り組みたい」とJAの担当者ら。同センターの篠木(ささき)佑主任研究員(39)は「ここ数年の暑さはあまりに厳しい。着実に良い品種を作っていきたい」と話す。