ひょうご経済プラスTOP 経済 【ベンチャーを追う】「大学発」起業促進へ動き活発 知財戦略支援などテーマに連携

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【ベンチャーを追う】「大学発」起業促進へ動き活発 知財戦略支援などテーマに連携

2020.10.17
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大学発ベンチャーの起業支援で連携した神戸大と大阪工業大の関係者ら=大阪市北区茶屋町、大阪工業大梅田キャンパス

大学発ベンチャーの起業支援で連携した神戸大と大阪工業大の関係者ら=大阪市北区茶屋町、大阪工業大梅田キャンパス

 大学発ベンチャーの設立や成長を促す動きが関西で活発になっている。高度な学術研究に基づく技術を生かすための知的財産戦略や、社会課題の解決と収益を両立する企業の育成などをテーマに、大学、企業が分野や府県を越えて手を取り合う。

 神戸大(神戸市灘区)は、大阪工業大(大阪市)と起業支援で連携する。2024年度までに両大で計60件の研究開発を発掘する計画。会社設立や特許出願などの専門家が、起業に向けた支援をする。

 神大はバイオテクノロジー分野などの学術研究に強く、経営学修士(MBA)教育にも力を入れている。今春には、産学連携会社「神戸大学イノベーション」を設立した。

 同大からはすでに、乳がん検査を痛みなくできる装置を開発したインテグラルジオメトリーサイエンス、DNA合成のシンプロジェンなど有力なベンチャーが生まれている。しかし、起業件数は東京大や京都大に大きく水をあけられており、さらに促す。

 一方、大阪工業大は、ものづくりの現場を支える技術者を育成し、大阪の産業界との関係が深い。国内の大学で唯一「知的財産学部」を持ち、技術力を売りにする中小企業やベンチャーが特許取得で事業を守ったり、信用を高める戦略の知見を蓄積する。

 大阪駅前に構える地上21階建ての「梅田キャンパス」では、複数の企業が連携して新しいビジネスを生み出すオープンイノベーションの拠点を、大阪商工会議所とともに運営している。

 神戸大産官学連携本部の安田崇オフィサーは、「両大学の得意分野を持ち寄って幅広い技術領域をカバーし、継続的にベンチャーが生まれる土壌づくりにつなげる」と力を込める。

 25年の大阪・関西万博を視野に、「ゼブラ企業」と呼ばれるベンチャーを大学発で育てる試みも始まる。少子高齢化など社会課題の解決と、利益という相反しがちな目的を追求する企業活動を指し、白黒2色の毛を持つシマウマに例える。大きな市場をつくり出して急成長するごく一握りの「ユニコーン(一角獣)企業」とは別の価値観として、注目が高まっている。

 経済産業省のプログラムにこのほど近畿圏が採択され、神大や兵庫県立大などの大学や高専、自治体、経済団体など計58機関が参加した。

 地域と共生しながら持続可能な社会の実現に貢献するベンチャー群を生み出す将来像を描く。5年で大学発ベンチャーと産業界とのビジネスマッチングを100件行い、10社のゼブラ企業を生み出すのが目標だ。

 総括エリアコーディネーターに就いた関西経済連合会の村尾和俊副会長(NTT西日本相談役、兵庫県新温泉町出身)は「産学の風通しを良くし、大企業の関与を拡大する」と財界としても力を入れる考えを強調。ベンチャー支援に詳しい副総括エリアコーディネーターの吉川正晃氏は「共感を集める事業を手掛ける企業を増やし、地域経済の新陳代謝を進める」と力を込めた。(大島光貴)