経済
「聞こえる世界」より多くの人に 「骨伝導」の集音器発売へ
音響機器を開発・製造するソリッドソニック(神戸市中央区)は、頭蓋骨などに伝えられた振動で音を聴く「骨伝導」による集音器を12月に発売する。首から提げる本体とイヤホンを一体化。集音器の感度や片耳ごとにイヤホンの音量を調節できるのが特長で、「より多くの人に『聞こえる世界』を届けたい」としている。(横田良平)
同社は2008年、取締役の田中哲廣さん(71)が創業。骨伝導のイヤホンを企画・開発し、周波数の帯域が広い「圧電セラミックス」を活用した振動子を考案した。ただ、イヤホンを小型化すれば出力が低下して音量も小さくなるため、集音器と一体化して解決しようと、数年前から開発を始めた。
完成品は出力を高めるアンプを内蔵し、イヤホンのみに比べて最大30倍まで音量を上げられるようにした。スマートフォンと接続して音楽を聴くことや、周囲の状況に応じて集音マイクの感度を変更できる機能も付けた。
片耳のみ聞き取りにくい人も使いやすいよう、左右で違う音量に調節が可能。イヤホンのサイズも3種類を用意し、耳の穴が小さい子どもでも安定的に装着できるようにした。
単4電池3本で約12時間使える。8万8千円。対面販売のほか、インターネットでも販売する。国内で難聴に悩む対象者は500万人以上とされるが、さらなる潜在ニーズも見込む。
同社は田中さんの高齢などを理由に今年、大手電機メーカー出身の久保貴弘社長(40)が事業を承継した。久保社長は「創業者が培ってきた技術をしっかり引き継ぎ、価値を加えたい。聞こえ方には個人差があるので、ぜひ視聴を試してほしい」としている。
12月から神戸市教育会館(同市中央区中山手通4)で視聴体験会を開く。完全予約制。詳細はソリッドソニックのサイト(https://solidsonic.co.jp/)へ。