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三田阪急、来秋までに撤退 駅前のシンボル、地域に衝撃

2020.12.18
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2階に三田阪急が入る商業施設「キッピーモール」=三田市駅前町

2階に三田阪急が入る商業施設「キッピーモール」=三田市駅前町

JR三田駅からつながる入り口は頻繁に人が行き交っていた=三田市駅前町

JR三田駅からつながる入り口は頻繁に人が行き交っていた=三田市駅前町

 新型コロナウイルスによる地域経済への打撃が、また一つ加わった。18日に分かった三田阪急(兵庫県三田市)の撤退。三田駅前の大型商業施設「キッピーモール」の核テナントだけに、なじみの客は「駅前のシンボルがなくなるのはショック」と驚きを隠さなかった。

 阪急は駅前再開発で2005年に開業した同モールに出店。2階のワンフロアのみでこぢんまりと展開していた。今年はコロナの影響で4月8日~5月20日に長期間の休業を強いられ、厳しい経営状態を立て直せなかった。来年秋までに閉店する。

 仕事帰りに立ち寄った神戸市灘区の女性(65)は「ここにしかない店やサービスが気に入って、開業時から来ている。小回りが利いて買い物がしやすく、温かい雰囲気も好き」という。閉店の知らせに「阪急といえば阪神間の駅前のシンボルなのでショックだ。三田に来る楽しみの一つがなくなった」と肩を落とした。

 近くに住む男性(60)は「歳暮や中元の買い物で利用する。新三田駅周辺の開発が始まった時期で、三田駅が寂しくならないか」と気をもんだ。

 同施設は市が株式の52・49%を出資する第三セクター「三田地域振興」が建物を所有、管理している。阪急からは11月27日に撤退の申し入れがあり、強く慰留したが覆らなかった。

 1階のスーパー「阪急オアシス」は営業を続ける。同モールから大型テナントが撤退するのは初めてとなる。

 駅前再開発事業でできた同モールには当初、百貨店の大丸が出店する計画があったが、バブル経済の崩壊などで撤回。阪神・淡路大震災を挟んで幾多の交渉が持たれ、阪急が小型店舗を出すことで決着した。

 同モールの開業後は神戸三田プレミアム・アウトレットやイオンモール神戸北(いずれも神戸市北区)など、大型商業施設との競争が激化。三田地域振興は一時、8億円の累積損失を抱えたが、経営改善を進めて19年度決算で累損を解消するなど回復基調にあった。

 番庄孝夫社長は「阪急の撤退による賃料収入の減少など、経営への影響は分からない。現実を受け止め、前を向いて次のテナントを見つけるだけ」と話した。

 同社の筆頭株主でもある三田市の森哲男市長は「(三田阪急を運営する)阪急阪神百貨店と緊密に連携し、新テナントの誘致を全面的に支援する」とコメントした。(高見雄樹、喜田美咲)