経済
神戸洋家具の骨とう品?「うちの机にそっくり」
兵庫県の地場産業である「神戸洋家具」の骨董品(こっとうひん)が一般家庭にも残されている-。完成から長い年月を経てアンティークな価値を帯びる家具が、県庁の監査委員室に現存することを神戸新聞の11月6日付夕刊で報じた。その後、掲載写真を見て「うちの机にそっくり」と、神戸市灘区の横野征子さん(82)に電話で教えていただいた。現物を確認しようと、神戸・元町の老舗家具店「永田良介商店」の6代目店主、永田泰資さん(35)とともに横野さん宅へ向かった。(塩津あかね)
「これ、なんですが」。自宅2階の居間で、横野さんが指さす先にどっしりとした1脚が鎮座していた。両側に引き出しが付いた「袖机」と呼ばれるタイプ。丸い脚や側面のデザインなどは、確かに県庁の監査委員室にあった机とよく似ている。
元家具職人で、今年2月に86歳で亡くなった夫、勇さんの作という。自宅を兼ねた家具工房の「横野工作所」を長年営んだが、10年前に引退していた。机の正確な製造年月は不明だが、工房を建て替えた1973年に自宅の居間に据えられた。
現物を見た永田さんは開口一番、「年月を経てすごく良い色になっている」。ナラの無垢板を使いながらも合板のように薄く加工しており、「堅牢につくられている」と感心する。征子さんは気づいていなかったが、引き出しの一部は補修されており、すーっと滑るように出てくる。永田さんは「良質の家具を技術のある人が直しているから。勇さんの腕の高さがうかがえる」という。
勇さんは神戸製鋼所の社長室の机や、その縁で社長令嬢の嫁入り道具なども手掛けた。征子さんは「社長室の机の材料が余ったから作ったのか。それとも、同じ机を試しに作ったのかもしれない」と話す。
◇
勇さんは生前、「100年かけて育った木を使うのだから、100年使える家具を作らないとばちが当たる」とよく口にしていた。2001年に経営破綻した高級家具店「インテルナきたむら」などを通じて、芦屋・六麓荘の富裕層や淡路島の開業医などに商品を納入したといい、「仕事が途切れることのない、職人にとっては良い時代だった」と、征子さんは振り返る。
妻は亡夫を「頑固で、世間知らずの職人だった」と評した。本人は家具づくりに徹し、工房の資金繰りは結婚前に信用金庫に勤めていた妻に任せきりだった。
その職人ぶりを示すエピソードを、征子さんが耳打ちしてくれた。ある時、勇さんは貴重な木材を見つけた。すると、数百万円もの大枚をはたいて買い付けたことがあったという。経営に無頓着すぎる夫に、征子さんは堪忍袋の緒が切れた。「もう離婚する」と迫ると、本好きの妻のために、天井まであるガラスの飾り戸のついた本棚を、その日のうちに仕上げてプレゼントしたことがあったという。
県庁の机を勇さんが作ったかどうかは分からない。それでも、職人魂が宿る双方の机に、神戸洋家具の高い製造技術が息づいていることは間違いない。
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