経済
野菜、路線バスで直売所へ JAと神姫が混載実験
JA兵庫六甲(神戸市北区)と神姫バス(姫路市)は19日、農家が育てた野菜を乗客とともに路線バスで運ぶ「貨客混載」の実証実験を三田市で始める。農家の高齢化で車の運転が難しくなり、出荷が減って直売所の品ぞろえに響きつつある。人口減による運賃収入の低迷を、農産物の搬送料でカバーしたいバス会社と手を携え、農業の活性化と生活の足の維持につなげる。(山路 進)
実験は、高平小学校前(午前11時2分)発・三田駅北口行きのバスを使い、毎週火・金曜の1便で4月末まで実施する。本格導入に向け、運搬ニーズや乗客の反応などを検証する。
実験では、農家が同校前停留所まで運んだ野菜を箱に入れ、車内の車いす用スペースに搬入する。バスは約10キロ先にある終点の同駅北口で乗客を降ろした後、野菜だけを載せて約1・5キロ西の直売所「パスカルさんだ一番館」近くの停留所まで走行。直売所の担当者が搬出して店内に並べる。
三田市によると、市北東の農村部である高平地区は人口減とともに高齢化し、65歳以上が住民の4割、70歳以上は3割を占める。農家は直売所に軽トラックなどで出荷するが、多くは70歳を超え、長距離運転への不安や免許返納などで出荷者が減少。2011年ごろの約170人から約50人になった。同社も昨年、乗客減から同区間の1便を減らした。
野菜の搬送料は、同区間運賃(560円)の半分弱の200~250円に設定する。同社の担当者は「新たな収益は路線を守るだけでなく、出荷者が増えれば地域も活気づき、乗客増も期待できる」とする。同地区での利用増と同市内外でのさらなる事業化も視野に入れる。
午後の品薄が課題だった直売所も、正午ごろに野菜が届くメリットがある。同直売所の野田浩史店長(46)は「生産者の名前で野菜を選べる直売所の魅力維持にもつながる」と期待。地区の出荷グループ代表の古池静雄さん(70)は「運転できずに出荷をあきらめている人がまた野菜を作るきっかけになれば」と喜ぶ。
◇
路線バスは元来、350キログラム未満なら荷物を運べ、かつては新聞や牛乳などを運んだ。過疎地の路線や物流網維持に向け、近年は貨客混載が全国で広がる。国土交通省は17年に規制を緩和し、許可を取れば350キログラム以上の荷物も運べるようになった。
兵庫県内では、17年から全但バス(養父市)が豊岡市でヤマト運輸(東京)の荷物を、18年から神姫バス子会社のウエスト神姫(相生市)が宍粟市で日本郵便(東京)の郵便物を運ぶ。