経済
選りすぐりの食材、高価でも集客力抜群 芦屋と六本木に店舗「グランドフードホール」
高級食材店の「グランドフードホール」が知名度を高めている。商品の質はもちろん、作り手の持続可能な成長を意識した品ぞろえが消費者の支持を集める。芦屋と東京・六本木の2店舗ながら、北海道や名古屋などの遠隔地からも客を引き寄せる存在感が群を抜く。創業者の岩城紀子さん(49)の軌跡を追った。(塩津あかね)
グランドフードホールは2014年、高級住宅が立ち並ぶ芦屋市東山町に開店した。全国から探し出した約500品目を陳列。添加物が少なく、安全性とおいしさを両立した商品を扱っており、価格は一般の食品スーパーに比べてかなり高い。
岩城さんはもともと、百貨店やスーパーから食品の仕入れを請け負う「バイヤー代行業」をしていた。しかし、消費者に届けたい逸品を見つけても、製造元の規模が小さいために安定供給できず、欠品のリスクがあるとの理由で何度も提案を退けられた経験がある。
商品づくりには長けても販売が不得手なメーカーは多い。「誰かが商品の良さを発信しないと、その企業はなくなってしまう」との危機感から、グランドフードホールを開業した。
最良の品だけを集めた店の戦略は徐々に支持され、18年に六本木ヒルズで2号店を開いた。「芦屋価格」「セレブしか行かない」と評されつつ、抜群の集客力も注目されるようになった。飛行機や新幹線に乗り、トランクを引いてまとめ買いする客が絶えないという。
岩城さんは、グランドフードホールの運営のほか、チョコレートの輸入販売やバウムクーヘン専門店などの六つの事業を展開する。グループの売上高は右肩上がりで現在は約25億円。それぞれの会社を設けて独立採算制を貫く。
事業部や持ち株会社にしないのは「1社1社が独立して経営が成り立たないと従業員の能力が生かせないから」だ。「黒字会社の利益を赤字会社に渡すと、黒字会社の従業員が報われない」と意義を強調。「自分の頑張りが成果に直結すると分かるよう、従業員には売り上げや人件費など毎月末の数字を全てオープンにしている。経営者の視点で考え、行動するよう言っている」と語った。
■「小規模でも優良なメーカーを支えたい」
岩城さんに、グランドフードホールの特長や経営理念などを聞いた。
-グランドフードホールを創業した理由は。
「自信を持って選んだ商品が流通に乗らない歯がゆさがあった。ベストの商品だけを集めた店をつくりたかったからだ」
-高価格商品が多いのはなぜか。
「添加物をなるべく使わず、手間をかけて作った食品はどうしても高くなってしまう。小規模でも優良なメーカーを支えたいという理念を発信できず、誤解を受けたまま何年もきた」
-なぜ、芦屋と六本木に開業したのか。
「富裕層や海外経験のある人が多いから。そういう人は寄付の文化を知っているし、小さいメーカーを支えていこうとの思いを持ってもらいやすいと考えた。最近は洋服やサプリではなく、普段の食事でお金をふんだんに使う人が増え、客層も拡大している」
-経営で大切にしていることは。
「グランドフードホールの仕入れ先は3千社。つぶれていく会社もたくさん見てきた。後継者問題はどうにかしないと、日本は大変なことになる。経営者はいつ死んでも、従業員が働き続けられる準備をしておかないといけない。毎年、遺言書を書き換え、誰を社長にするかを指名しているが、それが経営者の責任だと思う」
<いわき・のりこ> 富士スチュワーデス学院卒。1996年、米カジュアル衣料のギャップジャパンに入社。機能性食品開発会社ファーマフーズ専務などを経て2008年スマイルサークルを設立。宝塚市出身・在住。