経済
日本のサラリーマンがグラミー賞に 米国駐在時に参加の合唱曲で
米音楽界最高の栄誉とされる「第63回グラミー賞」で、兵庫県神戸市にもゆかりのあるドラマー小川慶太さんの携わる作品が受賞して話題を集めたが、実はもう1人、同市西区出身の日本人男性が参加したレコーディング曲が最優秀合唱パフォーマンス賞に選ばれていた。どんなプロかと思いきや、男性は大手タイヤメーカーに勤めるサラリーマン。「普通のおっちゃんでもグラミー賞を取れる。自慢しまくりたい」と、喜びを爆発させている。
住友ゴム工業(神戸市中央区)の人事総務部で働く大久保有記さん(39)=京都府長岡京市。会社では労務チームを統括し、雇用関連の法改正の対応などに当たる。
グラミー賞に選ばれたのは、大久保さんがかつて米国駐在時に所属した「バッファロー・フィルハーモニック・コーラス」などの「ザ・パッション・オブ・ヨシュア」(イエス受難曲)。荘厳な曲調のクラシックで、レコーディングに参加した同コーラスの約110人のうち日本人はただ1人だった。
大久保さんは3歳でピアノを始め、西宮市の関西学院中学部・高等部のグリークラブで活躍した。関西学院大在学中に留学した米国でも、大学の合唱団のメンバーになった。
住友ゴム入社後の2015年、米北東部ニューヨーク州バッファローの現地法人の工場に赴任した。人事総務の担当部長として、労働組合の対応などに追われた。
大きな仕事にめどがついた17年、実力のある音楽好きが集う「バッファロー-」のオーディションを受けた。留学時代、大勢と一緒に歌った楽しさが忘れられなかった。現地の同僚に、ボートや格闘技などの趣味を大事にする人が多かったことも背中を押した。難関だったが、見事合格。低音パートのバリトンを任された。
毎週、地元の大学に集まって練習した。コンサート直前になると、仕事終わりの午後7時~10時半ごろまで毎日仲間と腹から声を出した。帰宅するころにはくたくただったが「好きなことをするため、早く仕事を終わらせるよう頑張れた」と振り返る。
受賞したレコーディングは、日本への異動で、帰国を数カ月後に控えた19年4月に行われた。大切な時間を共に過ごした仲間と、悔いを残さないように全力で歌い切った。大久保さんは知るよしもなかったが、その年8月に発売された曲は世界的評価を得ることになる。
そして20年11月、大久保さんたちの曲は、他の4曲と共にグラミー賞候補にノミネートされた。待ちに待った日本時間今月15日未明の発表を、大久保さんは自宅のリビングで動画投稿サイト「ユーチューブ」の画面越しに、米国にいる同コーラスの友人とテレビ電話で話しながら見守った。
選ばれたのは、ザ・パッション・オブ・ヨシュア。ガッツポーズが出た。2人で声を上げて喜びを分かち合った。信じられない思いだったが、朝になって起きた妻に「やったぞ」と報告した。「すごいやん! でも100人分の1やろ」と返ってきた。
新型コロナウイルス禍で家で過ごす時間が増えたいま、大久保さんはピアノに熱中しているという。1日に朝と夜の計3時間ほど、電子ピアノの鍵盤に向き合う。「やってみたいことがあって、でも実際に踏み切るか迷っている人には、『門をたたいてみたら』とアドバイスしたい。先に何が待っているか、誰にも分からないから」(森 信弘)
-
神戸港、港湾物流の混雑緩和へコンパス導入 携帯端末を配布、コンテナ搬出入を予約 今秋までに開始2024.02.23
-
スマホゲーム「駅メモ!」とコラボ、但馬観光を満喫して JR西、23日からキャンペーン2024.02.23
-
イカナゴのシンコ漁 今年の解禁日協議も、意見分かれ結論出ず 26日再協議へ2024.02.22
-
神戸地区百貨店の売上高、1月は12・8%増 初売りやバレンタイン商戦好調、23カ月連続プラス2024.02.22
-
「デフレ脱却の兆し」「経済実態に比べ上がり過ぎ」 日経平均が史上最高値、県内経営トップらの反応は2024.02.22
-
神鋼環境ソリューション、認証の一時停止を解除 品質・環境管理の国際規格2024.02.22
-
企業の風土改善へ「水面下の思い」把握して 組織開発に取り組むNPO理事が講演 神戸2024.02.22
-
スカイマーク、3月から機内サービス一新 神戸発着便でUCCコーヒー無料提供 キットカットは終了2024.02.22
-
神戸港の輸出入総額、9カ月連続減 輸出は1月の過去最高に2024.02.22
-
ネスレ製品の一部、鉄道輸送に切り替え トラックが一般的な中距離帯で業界初 24年問題、CO2削減に対応2024.02.21