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地エネの酒 for SDGs(1)眠れる資源

2021.04.14
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瓶詰めしたばかりの純米吟醸酒「環」について説明する稲岡敬之さん=加西市三口町、富久錦

瓶詰めしたばかりの純米吟醸酒「環」について説明する稲岡敬之さん=加西市三口町、富久錦

弓削牧場にバイオガスと消化液をつくる発酵槽を設置する作業=2015年10月、神戸市北区山田町下谷上

弓削牧場にバイオガスと消化液をつくる発酵槽を設置する作業=2015年10月、神戸市北区山田町下谷上

■「農家」「蔵元」「飲む人」をつなぐ

 地球温暖化への危機感を背景に、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた動きが世界で加速しています。自然エネルギーへの転換や環境技術の導入が地域の課題となる中、人と自然を新しい資源循環でつなげる「地エネの酒」が兵庫の日本酒蔵元と農家の連携から生まれました。農と食の眠れる資源を生かすものづくりの試みを紹介します。

 地エネの酒の名前は「環」。読み方は「めぐる」です。

 「酒米を育てる。酒をつくる。酒を飲む。無限でない資源を大事にしてつながることが大事。今まではそれがなかった」

 プロジェクトに参加する蔵元「富久錦」(兵庫県加西市)社長の稲岡敬之さんは、瓶詰めしたばかりの「環」の意義を語ります。

 人と自然のつなぎ役を果たすのが有機肥料の「消化液」。農と食の現場から出る生ごみなどを発酵させて作ります。同時に得られるバイオガスは燃料になります。

 生ごみや家畜ふん尿、食品工場の廃棄物、下水汚泥は、エネルギーの視点で見直せば、まだカロリーや栄養が残る有機物の塊。「食べる」営みから日々発生している無尽蔵の資源であることに気づき、事業を始める施設が増えています。

 生活協同組合コープこうべ(神戸市東灘区)の食品工場、あべのハルカス(大阪市)、神戸市の下水処理場などではごみ処理費を大幅に削減。バイオガスを燃やして熱や電気をつくり、化石燃料利用を減らしています。

 ただ、残念ながら消化液の方は捨ててしまっている施設も少なくありません。

 この新しい地域資源の利用先として期待されているのが地域の農業です。プロジェクトのメンバーである神戸市北区の弓削(ゆげ)牧場は、6年前から本格的にバイオガスを生産する取り組みを始めました。

 約50頭の乳牛を飼う弓削牧場は、チーズづくりやレストランなど先進的な経営で知られます。残った課題が乳牛のふん尿の処理と有効利用でした。

 「元々はふん尿の臭い対策とエネルギー自給のために始めたが、今は消化液がおもしろい」と、場長の弓削忠生さんはその魅力を語り始めました。(辻本一好)

【地エネの酒 for SDGsプロジェクト】 エネルギーと環境の視点で新しい地域デザインを考えるプラットフォーム「地エネと環境の地域デザイン協議会」(事務局・神戸新聞社)のローカルSDGsのものづくりの試みです。「環」の正式販売は9月の予定。詳しくは「地エネnote」のページへ。