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地エネの酒 for SDGs(2)バイオガス

2021.04.15
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地中の発酵槽を見学者に説明する弓削忠生さん(左)=2020年10月、神戸市北区山田町下谷上、弓削牧場

地中の発酵槽を見学者に説明する弓削忠生さん(左)=2020年10月、神戸市北区山田町下谷上、弓削牧場

消化液で育てた野菜を見て味わう見学ツアー参加者ら

消化液で育てた野菜を見て味わう見学ツアー参加者ら

■普及の鍵を握る「消化液」

 弓削(ゆげ)牧場(神戸市北区)の場長、弓削忠生さんは毎日、まきボイラーに火を入れます。乳牛のふん尿や生ごみを入れた発酵槽をお湯で38度前後に保つためです。寒い日はしっかり温めないと、廃棄物をバイオガスと消化液に変える微生物が活動してくれません。

 「ガス生産量は日量7立方メートル。原料の入れ方などがよく分かってきたのは最近です」と、研究の長い道のりを振り返りました。

 バイオガス事業を始めたのは、牧場周囲で進む宅地開発への危機感からでした。畜産業のふん尿処理は堆肥化が一般的ですが、多頭化に伴い、臭いが社会問題となっています。精神的負担から廃業する農家も少なくありません。

 対策に悩んでいた弓削さんは、2008年に視察で訪れたオーストリアでバイオガス発電を導入している牧場と出合います。

 「これだ!」と思い立ち、先進地である北海道の大学や農場を訪ねる中で、中国などで普及する小型発酵槽の存在を知り、15年に1号機を設置しました。

 いまは2号機も稼働し、共同研究する神戸大がバイオガスの原料投入と生産、利用の管理システムづくりを担当。ガスで沸かしたお湯で搾乳ロボットやチーズ工房を洗浄し、暖房や発電にも使えます。

 一方、消化液は農業に利用します。レストランで提供する野菜を有機JASの認証を受けた消化液を使って育てます。

 「苦味がなく、野菜本来の味がする」などの評判が広がり、利用する近隣農家も増え、家庭菜園用の販売も始めました。

 消化液の利用拡大で期待されるのが面積の大きい稲作です。弓削さんが参加する「地エネと環境の地域デザイン協議会」では19年に消化液利用の分科会が立ち上がります。目標に定めたのが酒米山田錦でした。(辻本一好)

【バイオガス】酸素が入らないように密閉した容器で生ごみや家畜ふん尿などの有機性廃棄物を発酵させることで得られます。天然ガスと同様にメタンが主成分で、近年は化石燃料に代わる自然エネルギーとして地球温暖化防止の観点から注目されています。

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