経済
地エネの酒 for SDGs(4)消化液
■時期探り投入水田に活力
2020年にスタートした「地エネの酒 for SDGsプロジェクト」の酒米山田錦の栽培には、兵庫県内の3生産者が参加しました。資源循環の要である消化液の使い方はさまざまです。
NPO法人「都市型農業を考える会」(神戸市北区)の中西重喜さんは、田植えの前に土に施す「もとごえ」として使いました。
神戸酒心館(同市東灘区)の実験田は「稲が成長しすぎて倒れてしまった」と前年の教訓を語ります。
山田錦の稲は、肥料が多すぎると倒伏して収穫しづらくなります。同NPOは比較のため、消化液を10アール当たり2トン散布、同1・5トン散布、散布なしの三つで実証しました。
一方、豊倉町営農組合(加西市)では、田んぼの微生物の活力を高める資材にしようと考えました。同組合は「冬期湛水(たんすい)」という農法を実施しています。
稲刈り後の早い段階から田に水を張り、イトミミズや乳酸菌、酵母菌などの微生物を増やします。
有機物の分解が進み、稲が栄養を吸収しやすくなるという発想の取り組みは、県内ではコウノトリ育む農法が盛んな但馬地方で導入が進んでいます。
同組合は、山田錦を栽培する冬期湛水の田んぼには肥料は入れません。
「窒素が少ない田では初期の生育は遅れますが、倒伏に強い稲になります」と組合長の田中吉典さん。
消化液の投入は8月初め。田の水を一度抜いて根の張りをよくする「中干し」の後を選びました。
稲穂を実らせる最後の栄養分が必要な時期に、消化液に多く含まれるメタン菌に有機物の分解を進めさせる狙いです。
消化液は再び田んぼに入れる水に混ぜながら入れました。固形の肥料に比べ、作業時間も労力も大幅削減できるのも魅力です。(辻本一好)
【消化液】畜産ふん尿を生かしたバイオガス事業が盛んな北海道では、農業での利用が広がっています。発酵によって大腸菌などが死滅した衛生的にも優れた有機肥料で、土壌や水質汚染の解決策としても注目されるほか、小麦やジャガイモなどの病害を抑える効果の研究も進んでいます。
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