経済
<地を担う>(9)株式会社・ながしお農場(三木市)
高齢化、人口減少を前に農地、地域を守ろうと挑む兵庫の農業法人を紹介します。
■観光農園地域の魅力発信
中国自動車道神戸三田インターチェンジ(IC)から車で5分。三田、三木の両市境に近い2カ所のハウス計11棟でイチゴ約3万株を育てる。京阪神など兵庫県の内外から年間1万5千人余りがイチゴ狩りに訪れる。
入り口には大きなイチゴのモニュメントがあり、場内に軽快な音楽が響く。摘んだイチゴでジャムやパフェづくりも体験できる。「ここはイチゴのアミューズメントパーク」。永塩有(たもつ)社長(47)は胸を張る。
三木市吉川町出身。20歳から実家の建設会社で働き、主に町内で農地の区画を広げるほ場整備を担った。地元で酒米山田錦を育てるが「専業農家になる気はなかった」と笑う。
転機は2009年。農業をしていた父が脳梗塞で倒れ、建てたばかりのハウス数棟が残った。「生半可じゃ農業はできない」。会社は弟に任せて退社。施設の借金を背負って就農した。
トマトやメロンなどを直売所に出すが利益はわずかだった。打開しようと11年、三田でハウスを借りて始めたのがイチゴ栽培だった。売れ行きは上々で、自ら重機で田んぼを整地してハウスを広げ、高設栽培の棚は2段にして生産を増やした。神戸市北区の「神戸三田プレミアム・アウトレット」にも近く、人出を見越して16年に観光農園化して人気を獲得した。
イチゴ狩りの営業は12月から半年間で、それ以外の時期はブルーベリーや丹波黒の枝豆の収穫体験でファンを増やす。
それでも「高齢化する吉川町では田んぼの担い手がいなくなる」と危機感を募らせる。「観光農園は吉川や三田の魅力の発信拠点。経営が軌道に乗れば、次の代に任せたい。興味を持ってくれた人たちと、故郷の田んぼを守っていければ」。夢を描く。(山路 進)




















