経済
農作物の肥料、生長の差に応じて量調節 農地を「解析」可変施肥で収益性向上
農作物の生長に応じて、肥料の量を調節する新技術「可変施肥(せひ)」が、兵庫県内でも広がりつつある。昨年から実践する姫路市夢前町の農業法人「夢前夢工房」では、コメの収穫量が約2割アップ。肥料は無線操縦ヘリコプターで散布するため、収益性の向上とともに省力化も期待できる。(山路 進)
新技術は、肥料を一律にまかずに、生育状況に応じて散布量を増やしたり減らしたりして、均一に育てる農法。同じ田畑の同じ作物でも、日差しや土壌の養分などで生長の差が生じることから、農地の状況に応じて適量を施し、生育のむらをなくす狙いがある。
同法人は昨年、農機メーカーのヤンマーアグリジャパン(大阪市)と連携。水稲を育てる全ての田んぼ(約26ヘクタール)で新技術を活用する。
まず、田植え後の農地を上空から小型ドローンで撮影。イネの葉の色などを解析し、生育状況値(NDVI)をはじき出す。その上で、1メートル四方ごとの育ち具合に合わせ、無線操縦ヘリで肥料をまく。
県姫路農業改良普及センターは7月下旬、夢前夢工房の田んぼで、無線操縦ヘリによる可変施肥の実演研修会を開いた。
実演では、無線操縦ヘリが高さ約30センチに育ったイネの空中を飛びながら、場所ごとに異なる量の肥料をまいた。ヘリには、事前に解析した生育状況や肥料の散布量のデータを入力。農地の上空を満遍なく飛ばしてイネに適量をまいた。
同法人代表の衣笠愛之(よしゆき)さん(60)は「同じように見える田んぼでも、解析すると生育にむらがあった。技術のおかげで、肥料の無駄や人手を省ける」と手応えを口にした。初めて導入した昨年の収穫量は前年に比べて約2割増え、品質も向上したという。
現行の導入費は、撮影と解析が10ヘクタールで15万円、肥料散布が5ヘクタールで12万5千円かかる。それでも衣笠さんは「費用は収益でカバーできる。年数を重ねるほど、成果が出るはずで、引き続き活用していきたい」と話した。
参加した新野営農(兵庫県神河町)の福田利秋さん(66)は「分析することで経験がなくても取り組むことができそう。地域の農業を次の世代に引き継ぐため、導入を検討してみたい」としている。