経済
踏切内の歩行者、AIで検知 山陽電気鉄道、2カ所に導入
山陽電気鉄道(神戸市長田区)は7月から、踏切内に取り残された歩行者を人工知能(AI)で検知するシステムを沿線の2カ所に導入した。従来の障害物検知装置は車両向けが中心だったが、AIを使ってさまざまな動きをする人間の確認を可能にした。停止信号や運転指令室、従来の装置と連動させ、安全性を引き上げる。
内閣府の交通安全白書によると2020年、全国の踏切事故は173件発生し、半数弱の81件が歩行者との接触だった。無理な横断などが目立つという。
鉄道各社が安全対策を進める中、山電も運行区域の踏切全165カ所に障害物をチェックする装置を整備し、うち137カ所はレーザーなどで自動検知できるようにした。
ただこれらの装置は、人の検知が難しいことから、山電とグループ会社がAIの導入を発案した。関西電力の子会社「オプテージ」(大阪市)に呼び掛け、昨年8~10月に実証実験に取り組んだ。
導入したのは、飾磨駅近くの「飾磨車庫踏切」(姫路市)と、月見山駅近くの「月見山踏切」(神戸市須磨区)で、いずれも周辺の人通りが多い。
遮断機が下りると、監視カメラの画像をAIが高精度で解析する。異常を検知したら、高速で特殊信号発光機を作動させて近くを通る運転士に知らせるほか、指令室にも現地の映像とともに通知する。
実証実験では、車いすに乗る人やベビーカーを押す人を検知するなど、一定の効果を確認した。既存の検知装置と併用する。
山電の小田能之電気システム課長は「事業者として、踏切の利用者の命を守らなければならない。運用実績を検証して設置数を増やせたら」と話している。(大盛周平)