ひょうご経済プラスTOP 経済 関西初のグライダー滑空から100年 山と機体モチーフの靴下製造 加古川のメーカー

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関西初のグライダー滑空から100年 山と機体モチーフの靴下製造 加古川のメーカー

2021.09.25
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オリジナル靴下の試作品。グライダーと高御位山の刺しゅうがあしらわれている(シード・ワン・スタイル提供、左上は包装箱)

オリジナル靴下の試作品。グライダーと高御位山の刺しゅうがあしらわれている(シード・ワン・スタイル提供、左上は包装箱)

オリジナル靴下について打ち合わせをする田中繊維の田中一成常務(右手前)とシード・ワン・スタイルのメンバー(左側)ら=加古川市西神吉町

オリジナル靴下について打ち合わせをする田中繊維の田中一成常務(右手前)とシード・ワン・スタイルのメンバー(左側)ら=加古川市西神吉町

靴下を製造する田中繊維の工場=加古川市西神吉町

靴下を製造する田中繊維の工場=加古川市西神吉町

渡辺信二(田中あやさん提供)

渡辺信二(田中あやさん提供)

 大正時代に関西初とされるグライダー滑空に成功した兵庫県加古川市出身のパイロット、渡辺信二(1900~26年)が、地元の高御位(たかみくら)山を飛び立ち、成功を遂げてから今年で100年。同じ年に創業し、渡辺の縁者が経営する靴下製造の田中繊維(加古川市)が、山と機体をデザインした初のオリジナル商品づくりに取り組んでいる。地元の靴下メーカーは、アパレル大手などへの相手先ブランドによる生産(OEM)が中心だが、快挙の節目に独自商品で高品質の靴下をアピールする。(塩津あかね)

 渡辺は同社の田中一成常務(51)の妻、あやさん(54)の大叔父にあたる。同社は1921(大正10)年4月に創業。アパレル大手のレナウンにOEM供給を50年以上行い、現在も複数の大手に製品を納めている。

 新しい独自商品は、編み方で凹凸を出し、縦に筋が入った「リブソックス」。80年代に流行し、加古川の靴下産地で多くのメーカーが手掛ける。そこに、高御位山とグライダーの刺しゅうをあしらう。田中繊維の独自商品づくりを支援する兵庫県中小企業団体中央会の担当者が、地域にちなんだデザインを提案すると、同社と渡辺の縁が分かり、この二つを採用することが決まった。来月に発売する予定だ。

 デザインを担当するのはセミオーダー洋服を製造販売するシード・ワン・スタイル(高砂市)。代表の籠谷裕美さん(53)と娘の美桜(みお)さん(25)が担う。シードは、高砂市出身の女性デュオ「花*花」の衣装や、CDジャケットのイラストを提供しており、田中繊維はデザイン力や商品の発信力に期待して依頼した。靴下の包装箱のイラストなどもデザインし、山やグライダーのほか、工場で働く人や、編み機の部品であるシリンダーなども描いた。

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 同社の靴下は、表糸と裏糸の微妙なバランスを取りながら編み上げ、つま先部分をひと目ずつ縫い合わせるなど、海外製の安価な製品とは差別化している。田中常務は「足の形にそった靴下で、はいて初めて良さが分かる」といい、「ものづくりの技術を結集させて『これが本当のリブソックスだ』という製品を作り上げたい」と力を込める。

 加古川で開かれる即売イベント「靴下まつり」や、明石の各種イベントで販売してきたが、それ以外に直接販売する場がなく、再購入を希望する客の要望に応えられていなかった。10月9日からシード・ワン・スタイルのオンライン通販で扱うほか、同月5日から月末にかけてJR大阪駅直結の大型商業施設「ルクアイーレ」で販売する。2022年度以降、加古川市のふるさと納税の返礼品にも採用される見通し。

 全10色で、紳士用は1足2420円、婦人用は同2200円。田中繊維TEL079・432・2931

■兵庫、靴下三大産地の一角 紳士用は今も生産トップ

 兵庫は東京、奈良とともに国内の靴下三大産地の一つで、2020年は2600万足を製造。現在も紳士用の生産量では都道府県別でトップを誇る。

 兵庫産の靴下は、もともと木綿の栽培が盛んだった加古川市の生産量が多い。明治時代に編み機が中国から伝わったのが始まりで、農閑期の副業として生産が活発になった。戦後は神戸港が近いという立地の良さを生かし、世界各国へ輸出。1949年には兵庫の生産量が日本一になった。

 だが、80年代後半から中国などの安価な海外製が流入し、国内生産量は激減。兵庫県靴下工業組合(高砂市)によると、79年の加盟社は加古川市を中心に306社だったが、現在は50社にまで減った。

 産地の各社は、大手靴下ブランドの相手先ブランドによる生産(OEM)を行うほか、デザインや機能性などを高めた独自商品の開発に力を入れている。(塩津あかね)