ひょうご経済プラスTOP 経済 兵庫の10年間、デフレ脱却は遠く ガソリン価格ほぼ同水準 食パンは微減

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兵庫の10年間、デフレ脱却は遠く ガソリン価格ほぼ同水準 食パンは微減

2021.10.20
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神戸新聞NEXT

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 19日に公示された衆院選で各党が目指す経済政策には、格差是正のための分配強化や賃金引き上げが並んだ。約9年間の安倍・菅政権は大胆な金融緩和による円安と株高を実現したが、政権の意を受けて日銀が目指した2%の物価上昇は未達のままだ。物価の適度な上昇は賃金を押し上げ、好循環につながるとされる。「アベノミクス」の金融政策を地域経済の視点から振り返った。(高見雄樹)

 「日銀の黒田総裁が就任直後、2%の物価上昇率の目標を実現すると宣言したけど『まだ達成してない』とはおかしい。内装業をしてますが、材料もガソリンも、資材の鉄やアルミ、食料品も安いときから値上がりしてるのに。宣言から10年近くもたって、何が足りませんのやろ」。本紙「イイミミ」に今月、西脇市の男性(75)が声を寄せた。

 兵庫県の消費者物価指数(神戸市内で調査)について、2011年以降の動きを確認した。前年同月比の増減率は確かに2%を達成していない=グラフ【1】。

 黒田東彦(はるひこ)総裁が就任した13年春以降と19~20年にかけて二つの山があり、14年には2%を上回っているようにも見える。ただ、これらは消費税率引き上げの影響だ。この要素を取り除くと、2%に届かないばかりか、直近の20~21年を含めて物価の下落を意味するマイナス圏内の時期もある。

■ガソリン高騰

 男性が指摘するガソリンはどうか。県内のレギュラーガソリン価格(1リットル)は上下を繰り返しつつ、10年前の水準と変わらないように見える=グラフ【2】。

 この間、米国のシェールオイル増産や新型コロナウイルス流行による需要減など、価格の急落局面はあったが、足元ではコロナ禍からの経済回復への期待から原油価格が急上昇。ガソリンは16年前半の水準から約1・5倍に高騰した。県内の記録が残る04年6月以降、08年のリーマン・ショック前と14年のイラク情勢混乱時に次ぐ高値水準で、消費者の負担は大きい。

 男性が言う資材価格の高騰もデータで裏付けられた。企業間で取引される商品の価格動向を見る「企業物価指数」は今年9月、前年同月比6・3%増を記録=グラフ【3】。木材や鋼材、半導体などの価格が上がり、指数は今春から急上昇している。1985年以降ではリーマン・ショックの直前並みの水準だ。

■食パンは下落

 「お客さんによって、価格転嫁の状況は変わる」

 日銀の山崎真人神戸支店長は今月14日の会見で、地域経済が直面する原材料価格の上昇に言及した。一般論とした上で「国内と海外、企業と個人という4要素で考えると、海外企業向けが最も転嫁しやすく、国内の個人が最も難しい」。県内大手製造業の業績急回復にはこうした背景がある。

 個人向け商品やサービスの価格は上がりにくい。総務省の「小売物価統計」を基に、神戸市内の店頭販売価格の推移を調べると、日清食品の「カップヌードル」は10年間で1割ほど上がっていた=グラフ【4】。ブランド力を生かして価格転嫁に成功したが、こうした事例は多くない。

 原材料が麺類と同じ小麦粉でも、食パン(1キロ)は10年間で数%値下がりしていた。炭酸飲料「コカ・コーラ」(500ミリリットル)は10年前から3割近く下落。飲料系は価格の下押し圧力が強いことをうかがわせた。

■値上げに抵抗感

 「アベノミクス」は物価上昇によるデフレ脱却を実現できなかった。デフレはコロナ禍から立ち直ろうとする地域経済の足を引っ張る可能性も指摘される。

 「給料は上がってほしいが価格は安い方がいいという心理で、国全体に値上げをさせない雰囲気があるのでは」と話すのは、製麺業を営む牛尾周平さん(43)=同県福崎町。物価上昇へのアレルギーが根強い中、このところの円安進行も加わっただけに「原料を輸入して国内で販売するモデルは厳しい。このままでは海外に販路を持つ企業しか生き残れない」と指摘する。

 総選挙では「(コロナ対策の)給付だけでなく、デフレ脱却に向けた経済政策の議論に期待したい」と、牛尾さんは力を込めた。