経済
養殖ノリにチヌの食害 兵庫県内で確認 海の栄養不足が影響か
兵庫県水産技術センター(明石市)は、県内の養殖ノリがクロダイ(チヌ)に食害されていることを確認した。被害は養殖初期の高値で取引される柔らかい新芽に集中している。兵庫県は国内養殖ノリの約2割を生産し、出荷額は約200億円に上るが、近年は海の栄養不足に伴う色落ちなどにも見舞われており、ブランド維持の対策を急ぐ。(山路 進)
県内のノリ養殖は神戸から赤穂、淡路島の瀬戸内海沿岸で行われ、生産量は全国トップ3を誇る。苗を育てた網を水温が18度を下回る11月下旬、海に浮かべる。その後は翌年4月まで、ノリが15センチ余りに育つたびに根元を残して刈り取っては出荷している。
現場では、養殖の開始直後にノリの先が刈られたようになる「バリカン症」が頻発してきた。潮流の影響も考えられたが、網の近くで魚の目撃例が増えるなど食害の恐れも考えられた。
同センターは2018年12月~今年2月、明石、神戸・須磨、南あわじの養殖場計3カ所を水中カメラで観察した。冬から初春の日中に養殖網の下の水深約30センチを撮影したところ、全3カ所で多くのチヌの群れが確認された。
映像では、波にたなびくノリの新芽を20匹以上が次々に食いちぎっていた。ボラやメジナ、カモがつつく様子もみられたが、食害の大半はチヌによるものだった。
明石と神戸では、水温が10度近くに下がった1月中旬以降は現れなくなった。一方、水温が12度前後にまでしか下がらない南あわじは、3月も食害が確認されたという。
同センターによると、チヌによる養殖ノリの食害は、兵庫を含む14県で確認されている。網の周囲に侵入を防ぐ網を張ったり、音で威嚇したりするが、抜本的な解決には至っていない。千葉や香川では売り上げが半分以上減り、廃業に追い込まれるケースも出たという。
調査した谷田圭亮研究員(60)は「海の栄養不足で、チヌのエサになる貝やカニが減ったことが影響しているのだろう。兵庫県内の食害は年間生産量の1割前後とも言われ、これ以上拡大しないよう早急に手を打つ必要がある」と話している。
■チヌに発信機 動き解明し被害阻止へ
養殖ノリの食害を阻止しようと、県水産技術センターは、チヌの生態調査に乗り出した。個体に発信器を取り付けて養殖場周辺での動きを解明し、効果的な対策につなげる。
昨年12月、神戸周辺で捕獲した10匹の腹に小型の超音波発信器を埋め込んで放流した。須磨-垂水区の東西約5キロのノリ網に受信機10台を設置し、網周辺での動向を探った。
大半のチヌは放流から4日で付近から消えたが、1匹は12月7日~3月27日の109日間、網の近くにとどまっていた。
このチヌは、網周辺の東西約4・5キロを往来し、昼夜問わず、潮の流れが緩やかな時間帯に食害していた。
近くに作業船がいる時間帯は網から離れ、往来時は水深5メートル付近を遊泳した。水温が10度近くに下がった1月中旬以降は、水深10メートル前後から上がってこなかった。
神戸・須磨沖で、ノリを養殖するすまうら水産有限責任事業組合の森本明代表(58)は「食害の中心は高値の『一番摘み』で、食べられるとその後の収穫も遅れる。網を張ったが効果は乏しい」と嘆く。
今後も調査を続ける方針で、今月下旬には地元の釣り愛好家らが、発信器を取り付けるチヌの釣り大会を計画している。同センターの高倉良太研究員(35)は「1匹だが特徴的な動きがみえた。調査の精度を高めて、兵庫のノリを守りたい」と意気込む。
【クロダイ】北海道から九州の太平洋、日本海、瀬戸内海の沿岸に分布し、関西ではチヌと呼ばれる。5月前後に産卵し、1年で15センチ、3年で30センチほどになり、10年で40センチを超える大きさに育つ。雑食で貝や海藻、小魚などを食べる。味は淡泊で、食卓の人気は高くない。価格は同じタイ科のマダイの約4分の1にとどまり、漁業者はあえて狙わない。一方で、釣り上げるには高い技術が必要とされ、釣り人に好まれる。
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