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クラファンでシカ撃退の電気柵調達 ソバ栽培の新温泉・春来地区 出資者が収穫体験、交流も

2021.11.09
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電気柵を施したソバ畑を背にする兵庫県新温泉町春来地区の小谷和信さん(右から2人目)ら=春来地区

電気柵を施したソバ畑を背にする兵庫県新温泉町春来地区の小谷和信さん(右から2人目)ら=春来地区

 ソバの栽培に取り組む兵庫県新温泉町春来地区が今年、シカによる食害を解消するため、クラウドファンディング(CF)での調達資金で電気柵を設置した。6月から約2カ月間、資金を募り、80万円超を確保。三つの農地に電気柵を張ったところ、獣害はなく、無事にソバの実の収穫を終えた。住民らはネットでの反響に喜び、地域活性化への意欲を高めている。(山路 進)

 標高400メートルで棚田を擁する同地区は約20年前、地域活性化のためにそば店を開業。2017年に同町内の道の駅に2号店を開き、年間計4万人が訪れる。今年4月、ソバの生産や加工、店の運営などの主体を自治会100%出資の株式会社に改組し、活動を強化した。

 同地区では、65歳以上の住民が48%と高齢化が進み、休耕地も増加。積雪が少なくなった約10年前から、シカがコメやソバを食い荒らすようになり、多くの農地が被害に遭ってきた。地区は2年前、獣害を受けたことを受給要件とする鉄柵の設置補助を申請。採択されて昨秋に柵を張り始めた。

 しかし、作物を植えない休耕地では獣害が起きないため、補助を受けられなかった。増え続ける休耕地で作付けを再開する際の対策に行き詰まった。

 そこで、獣害対策を支援するNPO法人・里地里山問題研究所(丹波篠山市)に相談。同法人の鈴木克哉代表(46)からCFの活用を提案され、コストの安い電気柵を設けることに。今年4月からCFによる資金調達の準備を始めた。

 CFサイトでは、地区の高齢化や農地の現状、獣害での苦労などとともに、日本海の眺望など地区の魅力を発信。6月17日から資金を募り、54日間で108人から計82万円余りが集まった。

 出資者への返礼品は、千~10万円の金額に応じて18種類。そば店の食事券のほか、地区産のソバとコメに加え、栽培体験なども用意した。10月末に行ったソバの収穫体験には神戸や阪神間などから20人が訪れ、交流も深めた。

 鈴木代表は「対策の難しさとともに地域の魅力を伝えられた。柵の設置はあくまで手段。住民が将来の姿を共有できたことが何よりの成果」と喜ぶ。同地区の小谷和信区長(68)は「これほどの支援があるとは驚いた。インターネットでの発信を続け、多くの人に訪ねてもらい、地域を元気にしていきたい」と話した。