ひょうご経済プラスTOP 経済 <再現>関西スーパー株主総会 緊迫の統合案開票 株主ら「鉛筆消してないか」「検査役はいる?」

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<再現>関西スーパー株主総会 緊迫の統合案開票 株主ら「鉛筆消してないか」「検査役はいる?」

2021.11.12
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臨時株主総会を終え、大勢の報道陣に囲まれる関西スーパーの福谷耕治社長(中央)ら=29日午後、伊丹市中央6、伊丹シティホテル(撮影・坂井萌香)

臨時株主総会を終え、大勢の報道陣に囲まれる関西スーパーの福谷耕治社長(中央)ら=29日午後、伊丹市中央6、伊丹シティホテル(撮影・坂井萌香)

株主総会に出席するオーケーの二宮涼太郎社長(中央)=29日午前、伊丹市中央6、伊丹シティホテル(撮影・坂井萌香)

株主総会に出席するオーケーの二宮涼太郎社長(中央)=29日午前、伊丹市中央6、伊丹シティホテル(撮影・坂井萌香)

関西スーパーの株主総会に出席する株主ら=29日午前、伊丹市中央6、伊丹シティホテル(撮影・坂井萌香)

関西スーパーの株主総会に出席する株主ら=29日午前、伊丹市中央6、伊丹シティホテル(撮影・坂井萌香)

買い物客でにぎわう関西スーパーマーケットの大社店=9月20日、西宮市大社町

買い物客でにぎわう関西スーパーマーケットの大社店=9月20日、西宮市大社町

 食品スーパーの関西スーパーマーケット(兵庫県伊丹市)が、エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリンググループとの経営統合を巡って足元を揺さぶられている。首都圏地盤のディスカウントスーパーで、第3位株主のオーケー(横浜市)が関西スーパーの買収意向を示す中、同社が10月29日に開いた臨時株主総会で統合議案を僅差で可決し、H2Oとの関西スーパー争奪戦は決着したかに見えた。しかし、事態は直後に急転した。総会に諮られた議案の賛否を決める投票の集計にオーケーが疑義を示し、統合の差し止めを求める仮処分を神戸地裁に申請。司法判断によっては、再編が白紙となる可能性も出てきたからだ。

 あの日の総会から12日で2週間。関係者らへの取材をもとに、当日の動きを再現した。

     ◇

 10月29日の関西スーパー臨時株主総会。午前10時に開会し、会社側の説明や株主との質疑応答が続き、午後1時40分ごろ、投票が始まった。

 ■繰り返されるアナウンス「棄権は実質反対」

 議場では、議長を務める福谷耕治社長が投票の案内を始める。

 「正確性を期すため、マークシートを用いた投票により行わせていただきます」

 事務局が投票方法を説明する。マークがない投票用紙は「棄権」、投票用紙の提出がない場合は「不行使」として扱うことを説明し、さらにこう続ける。

 「なお、棄権は事実上反対と同じ評価を持つことになります。そのため賛成でも反対でもなく、議決権の行使をしない株主さまは棄権とされるのではなく、マークシートを提出せず、不行使とするようお願いします」。

 その後、福谷社長が後を継ぐ。事前の議決権行使では賛否が決着していないと発言した後、再び「白票」の取り扱いを解説する。

 「棄権は賛成票としてカウントされず、すなわち中立ではなく、実質的には反対として扱われるのでご留意ください」

 投票が始まり、議場が閉鎖される。午後1時50分、記入時間が終わる。

 ここでも、白票が棄権として取り扱いをすること、提出がない場合は不行使とすること、棄権は事実上反対となる旨のアナウンスが再び繰り返され、回収作業が始まる。

 福谷社長は、集計に時間を要するため午後3時までの休憩を宣言。株主たちはいったん議場を後にする。

 午後3時前。オーケーの発表などでは、この時点で統合案可決に必要な3分の2に届かない65・71%で否決された集計結果となったことを総会検査役の弁護士が確認した-とする。一方、関西スーパーは「午後3時の段階では集計作業は完了していなかった」とする。

 ■休憩延長「僅差。時間を要する」

 午後3時。議場に現れた福谷社長。

 「15時となりましたが、開票がまだ最終段階に入っておりません。非常に僅差です」「集計に大変時間がかかっております。僅差です。慎重を期するためにお時間をいただきたい」

 休憩をさらに1時間延長することがアナウンスされると、株主から嘆息が漏れた。結果を待ちきれず、会場を後にする人も。

 休憩中の午後3時半ごろから同45分ごろ、オーケーが統合差し止めの仮処分申請につながる事案が起こる。事前に賛成の議決権行使書を送付し、総会当日には白票を投じたある株主が、自身の票の取り扱いの確認を申し出た。関西スーパーによると、検査役同席のもとで株主に事実確認を行い、当該株主から回収担当者への発言や事前の委任状などから「棄権」ではなく、「賛成」と判断する。

 ■株主発言「どんな方法で集計?」

 午後4時ごろ、福谷社長が小走りで議場に入場する。「今、最終の確認をしています。あと5分程度お待ちいただければ。誠に申し訳ございません」とし、議場に沈黙の時間が流れる。

 約5分後。福谷社長が再度アナウンスする。

 「4時5分を過ぎております。精査をさせていただいていますので、今しばらくお待ちください」

 直後、株主の一人が発言を求める。福谷社長は続ける。

 「今、連絡が入りました。あと2、3分お待ちください」

 同じ株主が再度発言を求めるが、福谷社長は応えない。株主は発言する。

 「どんな方法で集計しているのか。(投票は)鉛筆ですからね。消してるとかないですか。密室でやってるんじゃないですか。最後の最後で、おかしなことせんといてくださいよ」

 

 福谷社長の返答はない。別の株主からは「検査役は立ち会っているか」との声も飛ぶ。

 さらに数分後の午後4時10分ごろ、議事が再開される。福谷社長が採決結果の報告を始める。

 「当社とイズミヤおよび阪急オアシスとの株式交換契約承認の件は、3分の2以上の賛成により原案通り可決されました」

 「第1号議案(統合案)については66・68%。大変僅差でございました」

 福谷社長が礼をする。拍手する株主、しない株主。半々程度だろうか。休憩を挟んで6時間超の臨時総会が終幕した。