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関西スーパー統合、「関西最強」いばらの道 低価格化で市場激戦、ネット勢力も参入

2021.12.15
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最高裁の決定を受け、オンライン会見するオーケーの二宮涼太郎社長

最高裁の決定を受け、オンライン会見するオーケーの二宮涼太郎社長

Oリテイリンググループとの経営統合が認められた関西スーパーマーケットの中央店=10月29日、伊丹市中央5(撮影・坂井萌香)

Oリテイリンググループとの経営統合が認められた関西スーパーマーケットの中央店=10月29日、伊丹市中央5(撮影・坂井萌香)

 エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリンググループとの経営統合が認められた関西スーパーマーケット(兵庫県伊丹市)。「関西最強の地域密着型食品スーパー連合」を掲げて新たな一歩を踏み出すが、市場環境は厳しさを増している。オーケー(横浜市)の資本参入を阻んだものの、関西には高品質・低価格を掲げる別の首都圏地盤スーパーなどが進出。インターネットスーパーも勢力を拡大しており、成長には「いばらの道」が待つ。

 「正当な判断が示された」。最高裁の決定を受け、関西スーパーは15日にH2Oとの統合にかかる株式交換を実施すると表明した。一方、オンライン会見したオーケーの二宮涼太郎社長は「関西スーパーとご一緒できず残念。司法判断を受け止め、本訴も株式公開買い付け(TOB)も実施しない」と述べ、保有する全株式を売却し、争奪戦から撤退する意向を示した。

 食品事業を「第2の柱」と位置づけるH2Oは、統合により売上高4千億円に迫る関西有数のスーパー連合を発足させる。スケールメリットを生かしたコスト低減のほか、生鮮品や総菜に強い関西スーパーの加入で商品力の強化も期待する。

 ただ、経営統合を決めた10月末の臨時株主総会では厳しい質問が相次いだ。オーケーから「楽観的」と指摘された事業計画は、統合後の2026年3月期の営業利益を21年3月期比84%増の135億円と見込む。

 新型コロナウイルス禍の「巣ごもり需要」で潤った事業環境は反動減も予測される中、株主から利益目標達成への覚悟を問われると、関西スーパーの福谷耕治社長は「従業員一丸で対応し、必ず成長する。期待してほしい」と答えるしかなかった。

 関西の食品スーパー市場の変化は激しい。昨年、低価格を掲げる首都圏地盤のロピア(川崎市)が進出。「同じ商品ならより安く 同じ価格ならより良いものを」をモットーに、尼崎店(尼崎市)を含めて関西に7店を構える。加古川市内に精肉や総菜の加工センターも稼働。来年1月には、神戸市西区に県内2店舗目を構える予定だ。

 さらにオーケーと同様、「エブリディ・ロープライス(毎日が安売り)」をうたうドラッグストア「コスモス」を展開するコスモス薬品(福岡市)も、兵庫県内で72店舗を有する。生鮮品は一部だが、インスタント・レトルト・冷凍食品や菓子、酒類などを幅広く扱い、同社は「関西はまだまだ出店余地がある」と意気込む。

 デジタル戦略も不可欠だ。ライフコーポレーション(大阪市)は11月から、アマゾンジャパン(東京)を通じて展開する生鮮食品や総菜の宅配サービスを、神戸市内に加え阪神間にも拡大。注文から最短2時間で届ける。

 オーケーの二宮社長は関西進出に関し、「関西の多くの人から出店してほしいとの声を聞いた。いろいろな選択肢があると思うが、どういう進出が現実的かを考え、行動に移したい」と含みを持たせた。

 りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「競争激化による収益環境の悪化で、スーパーは単独で生き抜くのが難しい」と指摘。「IT投資も不可欠な中、地域密着の看板は残しつつ、データ共有による連携が進むと見込まれる。業界の統合・再編は続くのではないか」としている。(横田良平)

■説明不足が招いた混乱

 司法は経営統合を認めた。事態がここまでもつれた要因は何だったのか。

 「法令および取引所のガイドラインにのっとった開示が行われており、適切と考えております」

 10月、経営統合に関し、臨時株主総会を前にした株主らから「説明不足ではないか」と指摘を受けた関西スーパーマーケットの回答だ。この言い回しが、一連の争奪戦を最も表しているように感じている。

 関西スーパーに問われたのは、株主を含む関係者への誠意ではなかったか。株主が求めたのは法令や規則に基づいた型通りの報告ではなく、納得できる説明であり、理解されるよう最大の努力を尽くす姿勢だったように思う。仮に総会で法人株主が投じた票が白票とされても、可決に必要な3分の2を優に上回っていれば、このような事態を招くことはなかった。

 今回の統合は株主にも理解が難しかった。株式交換という手法に加え、統合対象の2社の直近業績を大きく上回る事業計画に疑念を抱いた株主は多かった。

 総会では会社提案が淡々と可決されることも多い。取材の中で「関西スーパーは総会を甘く見ていたのでは」との声をいくつも聞いた。株主の切り崩しに遭い、接戦に持ち込まれたのが誤算の始まりだった。

 最終的に主張は認められたが、司法の場でも説明不足が指摘された。大阪高裁は株主の誤認の背景に、事前の議決権行使よりも当日出席が優先されるという総会ルールへの周知が欠けていたとし、その責任を株主に負わせることを否定した。

 H2Oリテイリンググループとの統合は、オーケーには協議すら知らされていなかったという。その姿勢もオーケーの反発や株主の不信を招き、事態を混乱させたように思える。

 新たな一歩を踏み出す関西スーパー。顧客や株主に誠実に向き合い、どう信頼を勝ち得るか。その姿勢が問われている。(横田良平)