ひょうご経済プラスTOP 経済 災害時の操業・物流助け合い 航空部品製造の競合5社で「事業継続力強化計画」

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災害時の操業・物流助け合い 航空部品製造の競合5社で「事業継続力強化計画」

2022.01.19
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災害対策で連携する田中工作所の田中直幸社長(左から2人目)ら5社の経営者や担当者=神戸市西区見津が丘5

災害対策で連携する田中工作所の田中直幸社長(左から2人目)ら5社の経営者や担当者=神戸市西区見津が丘5

 兵庫県内の中小航空機部品メーカー5社が、地震に備えて「事業継続力強化計画」を策定し、経済産業相の認定を受けた。有事に操業や物流を支え合うことで、大手メーカーへの部品供給を維持する。中小企業庁によると、競合関係にある複数の会社が手を結んで認定を受けるのは珍しいという。(森 信弘)

 5社は、田中工作所(神戸市西区)▽上村航機(加古川市)▽中谷鉄工所(神戸市西区)▽日本エアテツク(明石市)▽ミツ精機(淡路市)。いずれも川崎重工業(神戸市中央区)の航空機エンジンや産業用ガスタービンの製造を協力会社として支える。

 これまで川重と5社で情報交換をするなど切磋琢磨し、時にライバルにもなるが社長同士で親しく付き合ってきた。

 先鞭(せんべん)をつけたのは、主に航空機エンジンの部品を手掛ける田中工作所だった。新型コロナウイルス禍によって航空機関連業界が需要減に見舞われる中、田中工作所は昨年2月、以前から関心のあった事業継続計画(BCP)を、県中小企業団体中央会の支援を受けて策定。苦境にある5社で、防災対策に取り組もうという話が浮上した。

 中小企業基盤整備機構のサポートで、BCPよりも簡易な事業継続能力強化計画の策定に着手。同年3月から経営者や担当者で集まって計画をまとめ、11月に認定された。

 同計画には、緊急連絡先のリストや支援要請などを伝える書類を用意。災害時に製品の運搬代行などのほか、川重の許可があれば代替生産でカバーし合う枠組みを盛り込んだ。

 幹事を務める田中工作所の田中直幸社長(54)は「共通ルールができるか不安だったが、すんなり進んだ。平時の訓練もやっていきたい」。上村航機の井之上昭文常務(64)は「こういう大変な時期だからこそ、助け合わないとという機運があった」と振り返る。

 計画自体は地震を想定するが、メンバーらは「感染症による工場の操業停止なども含めて、困っていることがあれば助け合いたい」とする。

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■「強化計画」BCPよりも策定容易

 中小企業の防災・減災を進める事業継続力強化計画の認定制度は2019年に始まった。時間や労力のかかる事業継続計画(BCP)よりも簡単に策定できるため、認定の数が増えている。

 事業継続力強化計画は、防災・減災の事前計画を経済産業相が認定する。BCPは自然災害や政変、テロなどさまざまな危機を想定したり、復旧計画に細かい工程を定めたりするため、中小企業にとってはハードルが高い。

 事業継続力強化計画は主に自然災害に対応し、初期対応と平時の事前対策に限定し、認定企業には税制優遇などの支援策もある。

 中小企業庁によると、全国で認定されたのは21年11月現在で3万5590件(兵庫は2142件)。このうち、複数社による「連携型」は319件(同7件)にとどまっており、資本関係のある会社同士や工業団地など地域単位でのケースが多いという。

 災害の被害は一定の領域に拡大するため、同庁は連携型での計画づくりを推進する。田中工作所など5社の策定を支えた中小企業基盤整備機構近畿本部の担当者も「日本全体の生産ラインを止めないため、同様の部品を製造しているような企業の連携を進めたい」としている。(森 信弘)