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ノーベル賞の炭素素材活用、超小型の雷センサー開発へ 尼崎の避雷器メーカー

2022.01.27
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音羽電機工業などが開発を進める超小型雷センサー=尼崎市潮江5

音羽電機工業などが開発を進める超小型雷センサー=尼崎市潮江5

 避雷器メーカーの音羽電機工業(兵庫県尼崎市)が、北陸先端科学技術大学院大学(石川県、JAIST)などと共同で、2010年にノーベル物理学賞を受賞した炭素の新素材「グラフェン」を活用して、超小型の雷センサーの開発を進めている。従来の製品に比べて、設置コストや電力使用量を低減し、広域の高精度な落雷予測を実現できそうという。

 雷は雲の中で氷の粒がぶつかり、静電気が蓄えられることで発生する。地球の周囲は電気で覆われており、地上は晴天時でも100ボルト程度の電気を帯びているが、雷雲が近づくと千ボルト以上に増加したり、電気の極性が変わったりする。雷センサーは、大気中の電気の変化を検知して接近を予測する。

 グラフェンは1層の炭素原子でできた素材で、料理用ラップの300分の1ほどと極端に薄い。導電性が高く、海外では静電気センサー用に研究が進む。同社などは素材の特徴を生かし、大気中の電気の検出にも生かせないかと研究を重ねた。

 JAISTは、グラフェンをシリコンの上に置くことで、大気中の電気の力が加わった際にグラフェン上の電流が変化するセンサー素子を開発した。大きさは髪の毛の細さの10分の1という。

 音羽電機は、グラフェン上の微弱な電流を電気信号に変換する基板や電子回路の設計、分析方法の研究を担い、装置全体を完成させた。昨夏の実験では、20キロメートル離れた地点の雷の検出に成功し、近くの落雷を30分前に予測した。

 同社は約30年前から雷レーダーを手掛け、学校や公園、工場などに提供している。ステンレスなどの鉄板製で、全長約3メートル、重さは約20キログラムあり、外部電源を使ってモーターで作動させている。

 ただ、精度の高い雷予想には高密度にセンサーを設置する必要があり、小型で省電力、低コストの製品が求められていた。

 グラフェンの装置は手のひらに収まる大きさで、太陽電池で動く。場所を取らず、設置費用は現在の1台数十万円を数万円以下に抑えられることから、雷雲監視のネットワーク構築の可能性も広がる。

 音羽電機などは今後、屋外の耐久実験を経て数年内の実用化を目指す。同社の工藤剛史さんは「高密度に設置して多くのデータが得られれば、精度の高い落雷予測が可能になる。電力供給が不安定な途上国でも使われやすいのでは」と話している。。(中務庸子)

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【雷の被害】電気学会の報告などによると、国内の年間被害額は1千億~2千億円に上る。建物のほか、電線などから侵入した高圧の電気で電子機器が壊れるなどする。夏のイメージが強いが、北陸地方では11~3月に発生する「冬季雷」の被害も深刻。死傷者数は国内で年間数人~数十人、世界の死者数は年間数万人とされる。