経済
ローソン内に「八百屋」出店、兵庫で拡大 コロナ禍の新販路期待
地域の八百屋さんが大手コンビニのローソン店内に「出店」する動きが、兵庫県内に広まっている。野菜や果物の販路を広げたい青果店と、鮮度や味などをプロが目利きした商品で来店客増を目指すコンビニの思惑が一致。双方を神戸商工会議所が引き合わせる仕組みもできた。青果店は、新型コロナウイルス禍で飲食店への納入が落ち込んでおり、新たな販路としても注目される。(高見雄樹)
神戸の観光地・北野異人館街にある「ローソン神戸異人館通店」。入り口脇に昨年末、野菜の販売コーナーができた。書籍の棚を縮小し、キャベツや大根、ミニトマトなどを並べる。周辺は住宅地でもあり、新鮮な野菜が次々に売れていく。
野菜を販売するコンビニの多くは、本部からの調達ルートにのせて仕入れている。同店の場合は、青果店に一部の棚の品ぞろえを任せ、売り上げの一定額を手数料として受け取る。店には売れ残って廃棄するリスクもない。
野菜を納入するのは、宍粟市産野菜の専門店「おらのはたけ」(神戸市長田区)を経営する森谷(もりたに)秀光さん(31)。農園から朝に届いた野菜を包装し、午後にはローソン5店舗に並べる。果物や「おらのはたけ」の品ぞろえにない野菜は卸売市場で仕入れる。
2日に1回は商品を入れ替え、売れ残りで引き取った野菜は総菜に加工するなど廃棄ロスを減らす。森谷さんは「24時間販売してもらえるのは大きい。1人で食べきれるサイズに小分けし、価格もほぼ200円以下にしている」と話す。販売先の増加に合わせて、近く配送拠点を増設する。
異人館通店など神戸市内でローソン17店舗を運営する松岡商店(同市西区)の松岡稚香子社長は「鮮度と価格に、欠品しない安心感がそろうとコンビニ野菜へのイメージは変わる」と期待する。野菜だけで1日2万~3万円の売り上げを見込み、他の商品の販売増にもつなげたい考えだ。
青果店とコンビニをつなぐ仕組みは、高上(たかじょう)青果(北九州市)の高上実社長(52)がローソンの本部や青果店主らに呼び掛けて実現させた。2021年1月に展開を始め、今では九州や関東、東北のローソン約500店に八百屋の野菜が並ぶ。関西では、神戸市が初めてだ。
高上さんは「流通大手が野菜を安く、大量に仕入れて販売する今のやり方では、やがて作り手がいなくなる。地域で野菜を消費する循環には八百屋さんが不可欠だ」と、取り組みの意義を語る。
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コロナ禍で飲食店への納品が落ち込む青果店にとっては、コンビニが新たな販路になる可能性も秘める。先行する福岡では、1店舗当たり1日に5千~6千円の売り上げがあり、10万円を記録した店もある。
福岡での成功を聞いた神商議が昨年12月、神戸市内の青果店向けに説明会を開き、22人が参加した。おらのはたけなど複数の青果店が、神戸市中央、東灘、垂水、西区のローソン計24店に出店する。2月中にはさらに10店舗が増える。
神商議産業部は「新型コロナウイルスが再拡大する中でも、中小企業の販売機会が広がるよう支援したい」とする。