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欧州から退避、物流再構築…事態打開へ急ぐ兵庫県内企業 ウクライナ侵攻

2022.03.10
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兵庫県庁に設けられたウクライナ情勢の企業向け金融特別相談窓口=県庁(撮影・西井由比子)

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神戸新聞NEXT

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 ロシア軍によるウクライナ侵攻から10日で2週間。欧米企業がロシアからの撤退を加速させるなど経済制裁の拡大とともに、兵庫県内の企業も悪影響への懸念を日増しに強める。ロシアに駐在する日本人社員の出国や欧州拠点の体制見直し、混乱する物流網の再構築など、刻々と変化する情勢に対応。長期化も想定しながら、経験したことのない事態の打開に向けて知恵を絞る。

 「オランダ・アムステルダムの欧州拠点にいる日本人トップを今日(現地時間7日)の朝、(アラブ首長国連邦の)ドバイに逃がします」

 アシックス(神戸市中央区)の尾山基(もとい)会長は7日、神戸商工会議所の正副会頭会見で、緊迫したやりとりを明かした。

 旅客機の運航取りやめが相次ぐ中、当初は北大西洋条約機構(NATO)非加盟のフィンランド・ヘルシンキに向かわせる予定だった。ところが、伝統的に中立を守ってきた北欧諸国が、ウクライナへの武器供与を決定。急きょ方針を改め、「ドバイから指揮を執ることにした」と説明した。

 ロシアの国内情勢について「モスクワでは小売店やスーパーは開いているが、為替や物流コストの面から仕入れが厳しさを増す。経済も市民生活も差し迫っている」との見方を示した。

 陸上男子棒高跳びの五輪金メダリスト、セルゲイ・ブブカ氏(ウクライナ)に「メールを送っても返事は全然来ない」と明かしたほか、「陸上やレスリングなどロシアのアスリート向けにスポーツ用品の供給は続ける」と話した。

 モスクワに販売子会社を持つタイヤ大手、住友ゴム工業(神戸市中央区)は5日までに、数人の日本人駐在員全てがロシアを離れ、現地の従業員で営業を続ける。TOYOTIRE(トーヨータイヤ、伊丹市)も、日本人駐在員がロシアからの出国準備を急ぐ。

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 ロシア行き航空機の運航停止が影響するのは、医療用検査機器メーカーのシスメックス(神戸市中央区)。ドイツで製造する検査試薬をロシアに運べず、ポーランドからの陸送に切り替えた。同社は「紛争国への危険手当のような意味合いもあり、トラック運賃が急騰している。人命に関わるので何とか届けるが、長引けば影響が出るだろう」とする。

 シスメックスの売上高に占めるロシアの比率は数%で、2022年3月期の業績影響は軽微。販売やアフターサービスを担うモスクワの現地法人には日本人はおらず、家次恒(ひさし)会長兼社長は「医療分野は人道的な観点もあり、安定供給を続ける」とするが、予断を許さない状況が続く。

 はかりメーカーの大和製衡(やまとせいこう)(明石市)は、ロシア向けに年間2億円弱(20年度)の計量器を輸出する。売り上げ全体に占める割合は小さいが、担当者は「(航空機や船舶の運航制限で)輸送手段が少なくなってきた。現地通貨ルーブルの下落による売掛金の回収遅れも心配」と現状を説明した。

 西日本とロシア極東を結ぶ航路を持つ兵機海運(神戸市中央区)は、ロシア向けの貨物がそろわず、8日に出航予定だった貨物船を関門海峡沖で待機させている。担当者は「ロシアの貿易や経済活動自体が止まる恐れがある。欧米の制裁が長期化すれば、韓国経由の物流ルートを新設するなど、さまざまな選択肢を検討しなければ」とした。

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 神戸市内には、1917年のロシア革命で亡命したロシア人による洋菓子店が多い。ロシア企業と誤解される風評被害も心配されたが、ゴンチャロフ製菓(同市灘区)は「当初は身構えたが、現時点で(被害は)聞いていない」とする。

 兵庫県は2日、地域金融室にウクライナ関連の相談窓口を開いた。9日までの相談は数件だが「影響はこれから」と担当者。事業者には、資金繰りを支える県の制度融資を案内する。

 帝国データバンク神戸支店の担当者は「県内企業とロシアとの結びつきは強くないが、長引くと間接的な影響が広がる可能性はある」と分析。「新型コロナ禍とのダブルパンチで、倒産や設備投資の手控えなど景気にも影響する」と懸念する。(まとめ・高見雄樹)