経済
但馬牛さらにおいしく 兵庫県がゲノム解析、交配に活用へ 血統を倍の15グループに細分化
兵庫県は2022年度、県産高級牛肉「神戸ビーフ」や「但馬牛」になる「但馬牛」のゲノム(全遺伝情報)を解析し、生産への活用を始める。但馬牛は県内で代々優れた肉質の牛を選抜し、品質を高めてきた一方、純血を保つために病気の発生や繁殖力低下のリスクも伴ってきた。県は、遺伝情報に基づく交配を取り入れて、生産性の安定やさらなる品質の向上を図る。(山路 進)
県は22年度当初予算で、研究や育種改良事業として約2400万円を計上した。牛の鼻の粘膜から検体を採取し、研究機関に解析を依頼。全国和牛登録協会(京都市)とともに解析やデータ管理を進める。その結果を基に種雄牛の改良などに生かしていく。
但馬牛は100年以上、代々県内でのみ育てた牛だけを交配する閉鎖育種を貫く。その雄牛は、県が管理、飼育する5歳以上の基幹種雄牛12頭と、その候補となる2~5歳の待機種雄牛28頭のみ。畜産農家は、基幹牛の精液を購入。雌牛に種付けし、毎年生まれる1万頭余りの子牛や肥育牛を生産している。
遺伝的な多様性が失われると、遺伝性の病気が増え、交配も難しくなるとされる。このため県は04年度から、血統を可能な限りさかのぼり、8グループに分類、管理してきた。新たに導入するゲノム解析を使えば、15グループにまで細分化できるという。
系統によって肉質や体の大きさ、妊娠のしやすさ、乳量の多さなどの特長がある。しかし、高い肉質の牛を育てようと、使われる精液が偏ることも課題となってきた。
県はこれまでの基礎研究で、種雄牛のゲノムを解析。22年度には、種雄牛以外も含め1650頭を解析する。24年度までに、種雄牛の出産のために選抜している約千頭の母牛や、その子牛など計約5千頭を解析する計画。集まったデータとこれまでの情報を分析し、交配にも活用する。
県畜産課の担当者は「肉質とともに、肉付き、生産能力なども引き上げ、より優れた但馬牛の生産を続けられる体制を築きたい」と話している。



















