ひょうご経済プラスTOP 経済 大阪、京都から…芦屋に高級スーパー続々出店 昨年末から新たに3店舗 

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大阪、京都から…芦屋に高級スーパー続々出店 昨年末から新たに3店舗 

2022.04.27
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27日にプレオープンした「F.F.マルシェ芦屋」=芦屋市春日町(撮影・中西幸大)

27日にプレオープンした「F.F.マルシェ芦屋」=芦屋市春日町(撮影・中西幸大)

神戸新聞NEXT

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1977年開店のいかり芦屋店=芦屋市岩園町

1977年開店のいかり芦屋店=芦屋市岩園町

昨年12月にオープンした「ビッグビーンズ芦屋店」=芦屋市大原町

昨年12月にオープンした「ビッグビーンズ芦屋店」=芦屋市大原町

3月に開店した「YAMASHO JR芦屋駅店」=芦屋市船戸町

3月に開店した「YAMASHO JR芦屋駅店」=芦屋市船戸町

 東京の田園調布と並び称され富裕層が多い兵庫県芦屋市内で、厳選した食材や総菜を扱う高級スーパーの出店が相次いでいる。激安で知られる「スーパー玉出」の大阪の運営会社が新業態店を開くなど、昨年末から続く県外からの進出に地元既存店は改装などで対抗する。人口10万人足らずの同市には高級店だけで八つと過剰との声もあり、今後、生き残りを懸けた集客競争が激化しそうだ。(塩津あかね)

 派手な看板や「1円セール」で知られるスーパー玉出の運営会社は、高級スーパー「F.F.マルシェ芦屋」を正式開業前日の27日にプレオープン。開店前から40人超が列を作り、産地直送の有機野菜や自然食品などをそろえる2階建て店舗はにぎわった。

 運営会社フライフィッシュ(大阪市西成区)の浅浦哲夫常務取締役(72)は「芦屋に受け入れられるよういい商品をそろえた。玉出色を払拭し、芦屋ブランドで東京にも出店したい」と意気込む。

 芦屋では、昨年末から「F.F.-」を含む3店が参入。昨年12月、大阪市内で「BIG BEANS(ビッグビーンズ)」2店を運営する高鍋食品(大阪市福島区)が芦屋店を開いた。大阪の店には芦屋からの客も多く、客の出店要望もあった。魚や青果売り場に店員を配し、調理法を伝えたり、魚をさばいたりと市場のような雰囲気が売り。担当者は「うちは価格の高い高級スーパーではなく、高品質スーパー」とする。

 スーパーの事情に詳しい業界関係者は、相次ぐ進出を「芦屋の地名を生かして、価格競争に巻き込まれにくい高級スーパーという業態を確立したいのではないか」と分析する。

 「芦屋」の発信力への期待もある。京都府と兵庫県で酒販など11店を営む山庄(京都府京丹後市)は今年3月、JR芦屋駅構内に「YAMASHO(ヤマショー)」をオープン。3年前に有機食品の良さを伝えたいと地元で開いたオーガニック系食品スーパーに次ぐ店舗だ。

 山本繁仁社長(56)は「消費者の意識が高い芦屋に出店し、有機食品を社会に広めたい」と狙いを語る。芦屋進出を前に西宮市の人気パン店を買収し、国産など材料にこだわるパンを販売する。現在は次の出店場所を探しており、神戸市は有力な候補地という。

 2014年、山手の高級住宅街近くにできた高級食材店「グランドフードホール」は、安全性とおいしさを両立させた商品で全国から顧客を集める。創業者の岩城紀子代表(50)は「近隣の酒販店やいかりと同じ商品は置かない。扱いたくても、それが商売のマナーだと思う」。芦屋では長らく、品物に応じた暗黙のすみ分けが、店にも消費者にも受け継がれてきた。

 高級スーパーの代名詞として全国でも知名度の高いいかりスーパーマーケット(尼崎市)。1977年に開店した市内最古参の芦屋店、92年開業のJR芦屋駅前の店舗とも富裕層に根強い人気がある。その芦屋店が昨年8月から休業し、全面改装。新装オープンは12月1日、ビッグビーンズ進出の10日前だった。

 多くの店舗が芦屋へ進出する状況に、グランドフードホールの岩城代表は「現状は明らかにオーバーストア」と指摘する。「芦屋の消費者は厳しい選別眼を持ち、本当に良いものしか生き残れない。いずれ淘汰される店が出てくるだろう」