経済
管理職関与で不正製造、試験せずに虚偽報告…半世紀にわたる品質軽視の企業風土 三菱電機
全社的に広がる不正の温床はどこにあったのか-。全国で新たに101件の検査不正が発覚した三菱電機。兵庫県内の製作所では、管理職が関与した事案や、一連の不正が発覚したのち直近まで続けていたケースもあった。外部有識者による調査委員会は背景について「不正の自覚が乏しい」「課長クラスが機能不全を起こしている」などと指摘。品質を軽視する企業風土が改めて浮き彫りとなった。
「大変申し訳なく思っている。(調査結果を)真摯(しんし)に受け止めたい」。漆間啓社長は25日、東京都内で開いた会見で終始硬い表情を崩さなかった。
これに先立ち、調査委が会見し、第3報となる報告書を発表。不正を正当化する従業員の意識▽第1報、第2報でも示された「検査の手続きを軽視する」手口が管理職まで広がっている-などの問題を列挙した。
姫路製作所(姫路市)では2016年2月~22年5月、管理職や関係部署が協議の上、顧客の指定内容とは異なる方法でインバーター(電力変換器)を製造。4月に不正が判明していた系統変電システム製作所赤穂工場(赤穂市)では、管理職がコスト削減のため、検査の実測値の書き換えや設計の不正を指示していた事実が明らかになった。
調査委の木目田裕委員長は「管理職がしっかりしなくてはいけないが、そうできない組織や企業風土をつくってこなかった経営陣の責任は重い」と強調した。
伊丹製作所(尼崎市)では一部の鉄道車両用品で特定の試験をしないまま、実施したとする虚偽の報告書を取引先に提出。不正は、少なくとも半世紀にわたって続いていた。
調査に対し、不正に関わった全国の従業員からは「意味の乏しい検査にすぎない」「先輩や前任者から検査しなくていいと教わった」との声も出たという。報告では「『悪いことをしている』自覚があまりなかった。自らを正当化する芽をつぶすべき」と求めた。
同社がこれまで取り組んできた防止策に「具体的な中身がよく分からない」と回答する従業員も。調査委は「本社からの一方通行で、現場は自分のことと受け止められなかったのでは」と指摘した。
続いて会見した漆間社長は、品質改革を担う社長直轄組織や人事制度の刷新など複数の再発防止策を発表。「不正を出し切る。改革を徹底していく」と繰り返した。
不正の公表後も別の製作所で不正が続いていた点を問われると「申し訳ない。自分を正当化してしまう風土を是正する」と声を振り絞った。不正の理由にコスト削減があった点については「自分の部門損益を優先させた結果。売り上げにこだわりすぎないよう変えていく」とした。(末永陽子)
【三菱電機の検査不正問題】三菱電機の工場で製造する機器の検査が適正に行われなかった問題。昨年6月に長崎製作所(長崎県時津町)で製造した鉄道車両向け空調機器の長年にわたる検査不正が表面化し、その後も他の工場で不正行為が相次いで発覚した。当時の杉山武史社長は7月に引責辞任、柵山正樹会長も10月に辞任した。