経済
事業承継の手法、農業経営でも注目 担い手減る中「持続的な発展へ重要」
少子高齢化で農業の担い手が減る中、農家が、農地を含めた農業経営を親族以外の第三者に事業承継する手法が注目されている。新規就農者にとって農地や機械などの農業資産を引き継げるとともに地域との関係も築きやすく、メリットは大きい。兵庫県農業経営課は「農業の持続的な発展にとって重要な手法」とみている。
農林水産省の2020年農林業センサスによると、県内で、主な仕事が農業の基幹的農業従事者は3万4591人。5年前に比べて2450人(6・6%)減り、平均年齢も70・6歳と初めて70歳を超えるなど、担い手の確保が難しくなっている。
「地元で農業をやりたいと考えていた」。姫路市出身の吉田勝博さん(36)が、個人事業主として「播州姫路 吉田農場」(姫路市安富町名坂)を立ち上げたのは2年前。地元農家の馬躰哲郎さん(75)から農業を引き継いだ。
吉田さんは、清酒「奥播磨」で知られる地元の酒造会社「下村酒造店」と契約した酒米を中心にコメを約11ヘクタール、地域特産の白小豆も約2ヘクタールで育てている。
大学卒業後、姫路市の養鶏会社に就職。農業部門でコメ作りなどに携わった。14年、地元で農業を始めたいと思い、馬躰さんを訪ねた。2人とも地元出身。馬躰さんは近隣で農業をやめた人の約7ヘクタールを管理しており、その中に吉田さんの実家の農地0・5ヘクタールもあった。
「もう年だし、後継者を探している」。馬躰さんの言葉に、吉田さんは後を継ごうと決意。休日などに田んぼに足を運び、地域の人と関係も深めた。馬躰さんから経営状態について教えてもらう一方、資材調達や販路拡大でアドバイスした。
準備に3年をかけて17年に会社を退職。馬躰さんを手伝いつつ、知り合いの農場などで経営を学んだ。そして20年に独立。馬躰さんには今も手伝ってもらって二人三脚を続けている。
「時期が早過ぎても遅過ぎてもダメだった」と吉田さん。今回のケースは、2人がタイミングよく知り合い、十分な準備期間を経て、事業承継できた。
農業機械や農地などを一覧にした覚書をつくって契約するなど、トラブルを防ぐ工夫も。吉田さんは「馬躰さんに対して忖度はせず、配慮はして進められた」と振り返る。馬躰さんも「孫みたいな後継者ができて安心だ」とほほ笑む。
同センサスによると、県内の個人経営農家(65歳以上)で、親族でなく経営にも関わっていない後継者を確保している人は0・4%に過ぎない。それでも県農業経営課の担当者は「第三者への承継は重要な手法。円滑に継承できるポイントを整理したい」としている。(森 信弘)



















