ひょうご経済プラスTOP 経済 衛星×AIで農地管理 遊休地把握へアプリ導入、調査作業を軽減へ 神戸市農業委

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衛星×AIで農地管理 遊休地把握へアプリ導入、調査作業を軽減へ 神戸市農業委

2022.06.21
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アクタバの画面を紹介する坪井俊輔社長(左)と岡野光世担当課長=神戸市役所

アクタバの画面を紹介する坪井俊輔社長(左)と岡野光世担当課長=神戸市役所

農地の状況を見てタブレットを操作する神戸市農業委員会事務局の職員=2021年6月、神戸市西区(サグリ提供)

農地の状況を見てタブレットを操作する神戸市農業委員会事務局の職員=2021年6月、神戸市西区(サグリ提供)

 農家の高齢化などに伴い発生し続ける遊休農地を的確に把握しようと、神戸市農業委員会は2022年度、人工衛星と人工知能(AI)を活用するアプリを導入した。全ての農地の利用実態は毎年、農業委員らが調査しなければならない。委員らは現地調査を続けるが、作業が煩雑で大きな負担になっている。同委は、アプリ導入によって調査精度の向上と委員らの労力低減を図る。(森 信弘)

 導入するアプリは、タブレット端末で使う「ACTABA(アクタバ)」。IT技術で農業の効率化を図るスタートアップ(新興企業)の「サグリ」(丹波市)が開発した。21年の発売以来、岐阜県下呂市などで導入実績があるが、近畿2府4県では初めてという。

 神戸市内で耕作されない遊休農地は22年3月末時点で、約73・6ヘクタールと全農地の約1・5%を占める。農家の高齢化などで毎年のように発生している。

 こうした農地の状況は毎年、農業委員や農地利用最適化推進委員を務める農家や事務局職員らが調査。紙の地図を手に、写真を撮りながら現地を訪ねる。調査後も、データの入力や地図づくりなど多くの作業が負担になっている。

 アクタバは、人工衛星が撮影した画像を活用。生い茂る草など農地内部の違いをAIが分析し、耕作放棄の可能性をパーセンテージで指し示す。紙の地図の代わりにアプリを使うことで入力の手間が省け、調査や記録作業を大幅に減らせる。継続して使えば、利用状況の変化を把握しやすくなり、現地調査の対象も絞り込めるという。

 神戸市は同社と21年1~6月、市内のさまざまな農地でアプリを実証実験。AIが学習を重ねることで、現況に近い精度になることを確認し、導入を決めた。アプリの利用料は面積によって異なるが、同市は22年度当初予算で年間システム利用料として165万円を計上。今年秋から、市内全域の農地調査で活用する。

 市農業委事務局の岡野光世担当課長は「調査に追われた農業委員らの作業軽減につながる。使われない農地の有効活用に向けた指導に力を入れられる」と強調。サグリの坪井俊輔社長も「アクタバを全国にある農業委員会に広げたい」と話している。