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企業版ふるさと納税で研究助成 寄付企業がテーマ設定、若手の学者ら応募 神戸市

2022.06.28
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神戸新聞NEXT

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 神戸市は地域課題の解決を目指す若手研究者を助成する制度「大学発アーバンイノベーション神戸」に、企業版ふるさと納税を活用した研究費の助成枠を新たに設けた。企業にテーマを設定してもらった上で研究課題を募集し、選考された応募者に寄付金を分配する。研究者と企業の接点を増やして新たな技術開発を後押しする狙いで、三井住友信託銀行が運営に協力する。神戸・三宮に企業と研究者の交流拠点を設けることも検討している。

 大学発アーバンイノベーション神戸は2020年度に開始。神戸エリアにキャンパスのある大学の若手研究者を対象に、神戸市の地域、行政の課題解決につながる研究テーマを募集し、研究費を助成している。

 これまでにノエビアスタジアム神戸の混雑緩和や、神戸とユダヤ社会との歴史的関係を観光に生かす方策の研究などを支援。20年度は15件約3900万円、21年度は10件約4600万円を公費で助成している。

 今回新たに設けた枠は、助成金を全て企業版ふるさと納税の寄付で賄うのが特長。連携協定を結んだ三井住友信託銀行が、取引先企業などに神戸市への寄付を呼びかける。寄付を通じて大学やスタートアップ(新興企業)と接点ができるメリットもアピールする。

 大学にとっては、研究成果をより社会に還元しやすくなる。企業と大学を同行が結び付け、神戸で新たな事業の種が生まれやすい環境をつくる狙いがある。

 早速今月、同行が3月に神戸市に寄付した3千万円を原資とし、助成対象の公募を始めた。初回のテーマは、デジタル技術で行政機能を高める「スマートシティー」関連など、「地域発イノベーション(新しいサービスや製品)創出につながる研究」とした。

 神戸市の隣接自治体や阪神地域、淡路島にある大学に勤務する49歳以下の研究者が対象。7月20日まで取り組みたい研究を募集し、3件に各1千万円を助成する。今後は寄付があり次第、研究課題を公募する。

 寄付企業が増えれば、大学や企業、行政などの担当者が集い、自由に意見交換できるスペースを神戸・三宮周辺に開設したい考え。広さ500平方メートル程度を想定している。

 神戸市の担当者は「今後は公募テーマを絞り込むなど、研究者と企業がよりつながりやすい仕組みを考えたい」と話している。(高見雄樹)

【企業版ふるさと納税】国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに企業が寄付すると、法人税などが最大9割控除される制度。2016年度に始まり、20年度に控除額が増えたことから急速に利用が広がっている。同年度は全国で2249件、約110億円の寄付があった。本社がある自治体は対象外。