ひょうご経済プラスTOP 経済 「砂栽培」でミニトマト 港湾運送の大森廻漕店、農業分野に参入 障害者雇用、海外展開図る

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「砂栽培」でミニトマト 港湾運送の大森廻漕店、農業分野に参入 障害者雇用、海外展開図る

2022.06.03
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高さ調節できる設備で、砂栽培により育てる大森ロハスクリエイトのミニトマト=大阪府四條畷市下田原

高さ調節できる設備で、砂栽培により育てる大森ロハスクリエイトのミニトマト=大阪府四條畷市下田原

砂栽培で育てた野菜の苗。包装紙で区切り、そのまま植え替えられる=大阪府四條畷市下田原

砂栽培で育てた野菜の苗。包装紙で区切り、そのまま植え替えられる=大阪府四條畷市下田原

砂栽培事業に参入した大森ロハスクリエイトのビニールハウス=大阪府四條畷市下田原

砂栽培事業に参入した大森ロハスクリエイトのビニールハウス=大阪府四條畷市下田原

砂栽培で育てる小松菜。高設施設で、腰をかがめずに収穫できる=大阪府四條畷市下田原

砂栽培で育てる小松菜。高設施設で、腰をかがめずに収穫できる=大阪府四條畷市下田原

砂栽培のビニールハウスで育つミニトマト=大阪府四條畷市下田原

砂栽培のビニールハウスで育つミニトマト=大阪府四條畷市下田原

 港湾運送の大森廻漕(かいそう)店(神戸市中央区)は今春、農業分野に参入した。ビニールハウス内で、腰高の高設栽培施設をゆったりと配置。土の代わりに砂と液体肥料で作物を育てる「砂栽培」を採用してミニトマトを育て始めた。広々としたスペースで車いすでの作業も可能で、将来的には障害者の雇用とともに、本業の物流ノウハウを生かした輸出も視野に入れる。(横田良平)

 4月、事業子会社「大森ロハスクリエイト」を設立した。高設施設での砂栽培に取り組む大阪府四條畷市の農業法人グリーンファームの敷地にハウス1棟を建設。社員4人が技術指導を受けながら試験生産する。

 参入のきっかけは、若手の提案だった。約4年前、大森廻漕店創業150年となる2023年に向け、若手社員約10人の新規事業検討チームを立ち上げた。その一人、秋永裕介さん(37)は「今の仕事の延長線上にないものを」と、知人が取り組む一風変わった栽培法を発案。4月に大森ロハス-の取締役に就くことになる辻一仙(いちひさ)さん(47)の元を訪ね、砂栽培や高設栽培施設の魅力を聞き取った。

 粒子状の砂は、通気性や保水性に優れ、土のような入れ替えが不要で容易に転作が可能。苗床を高くすることで、かがんだり、腰を曲げたりする必要がない。だが初期投資のコストは高く、栽培実績が乏しく普及していない。

 「新しい農業の形だと感じた」と秋永さんは、社内で砂栽培の事業化を提案。同チーム指導役の浜森康人さん(58)らも「(本業との)接点がない方が、いろんな展開が見込める」と応じ、昨年夏、グリーンファームの視察に向かった。

 同ファームの高設施設は高さを自由に調整でき、通路も広かった。チンゲンサイや小松菜など10種類程度を栽培し、車いすの障害者も種まきや収穫を担っていた。同行した大森廻漕店の須藤明彦社長(69)は「新鮮で無農薬の野菜を、障害者も一緒に生産できる。消費者にも感動を与えられるのではないか」と昨年末に参入を決めた。

 大森ロハス-は、同ファームの指導を受けながら栽培品目の拡充を計画。同社監査役に就いた浜森さんは「3年間で収支を合わせ、ゆくゆくは神戸でも栽培したい」とする。スーパーなどへの出荷のほか、交流サイト(SNS)での販売も展望。農業法人化や海外展開で規模拡大を図る。

 社名には、「健康で持続可能な地球環境を創造する」との意味を込めた。浜森さんは「障害を問わず誰もが働け、経済性も兼ねた会社を目指したい」と話す。

【砂栽培】土の代わりの砂と、窒素・リン酸・カリウムなどの液体肥料を使う栽培法。粒状の砂の間に隙間ができ、通気性や保水性が高い。砂にはほとんど養分がたまらず、培地の成分バランスが変化して起きる連作障害が起きにくいとされる。導入作物は葉物野菜が多いが根菜も育つ。高設栽培のため作業しやすく、異業種も参入しやすい。一方、コスト負担や品種に応じた肥料調整の難しさから普及が進んでいない。